話し合いを続けた結果、私は違う世界から来たという俄かには信じられない話に落ち着いた。
信じたくなくともこれだけの食い違いを見せつけられたら最早これは現実だと受け止める他ない。
遅ればせながら改めて自己紹介をし、赤髪の人がマスルールさん、銀髪の人がジャーファルさん、そして長髪の人はシンドバッドさん。
何とシンドバッドさんはこの国シンドリアの王様だという。
今いる場は王宮で、私はなんて方々に助けられたのだと改めて丁重にお礼を述べた。
さて、現状把握して少し落ち着いた所でこれからどうやって暮らしていこう。
大きな街があるみたいだからそこで何とか働かせてもらえる所を探そう。
果たして私のような身分も定かでない子どもが簡単に働かせてもらえるか分からないが。
とにかく頼み込んでやってみるしかないだろう。
そんな事を考えていたらシンドバッドさんはよし!と手を打って私を見た。
「行く宛が無いならはここで暮らせばいい。」
「えっ」
「ちょっとシン!?」
にっこり笑って告げられた事に目を丸くさせてると、
傍らにいたジャーファルさんが慌ててシンドバッドさんを咎めていた。
「だってこんな幼い子供を外に放り出せと言うのか?
はこの世界の事を何も知らないんだぞ。状況は特殊であれど彼女はか弱い民だ。
それをつまみ出すなんていつから君はそんな冷たい男になったんだねジャーファルくん!」
「うっ…」
ジャーファルさんは困ったように言葉を詰まらせた。
確かに私がまだ子どもとはいえこんな怪しさ丸出しの奴を王宮に置くなんて無茶だ。
でも正直置いてくれるなら大変有り難い。
そんな気持ちの狭間で葛藤していると、ジャーファルさんがはあ、とため息をついた。
「…分かりました。食客として受け入れましょう。」
「…ありがとうございます!」
がばりと頭を下げれば良かったなあとシンドバッドさんは笑った。
私も知らず知らず緊張していたのか入っていた力をそうっと抜いた。
そういえば鞄以外にいつも被っている黒魔道士のみんなが作ってくれたとんがり帽子、あと杖を持ってきていた筈だがどこへいったのだろうか。
ざっと視線を潜らせれば帽子は横にある小さなテーブルにあり、杖は案外近くにベットの傍に立て掛けられていた。
手にとって見た所どこも異常はなさそうだ。
「よかった、なくしたかと思った…。」
「その杖、もしかしては魔導師なのか?」
「はい、まだ修行中の身ですが。」
そう答えるとジャーファルさんは驚いた様な顔をして、シンドバッドさんはぱっと顔を明るくした。
「それなら尚更ここにいるといい。王宮内にもと同じ魔導師がいるし修行するには持ってこいだろう。
その代わり得た力を我が国の為に貢献してくれればいいんだ。」
「分かりました。微力ながらお力添えになるよう精進致します。」
深々と頭を下げて誓いを立てた。
これから元の世界に帰れるかわからないし先行きは不透明だけど、
今は素性の知れない私を受け入れてくれた優しい人達の為に力を尽くすことをがんばらないと。
何があっても前を向いて生きていかなきゃいけないのだから。
14.1.25