今日もジャーファルさんから文字を教わった後、魔法の修行をしようと中庭に出てきた。
王宮はとにかく広い。
だから中庭といえど半端な大きさではないので、私以外にも談笑する人や鍛練をしている人がいた。
建物の裏側、片隅に腰を下ろして魔導書を開く。今日は何の魔法を勉強しようか。
昨日は炎の魔法をやったから今日は氷魔法をやろう。
その魔法が載っているページを開いて呪文を確かめる。一通り読んで頭に叩き込んだ。
両手を前に出してすうっと息を吸って、静かに吐き出す。
下級の氷魔法ブリザド。
素早く詠唱をすると青白い魔法陣が浮かび上がり、氷の礫が地面に突き刺さった。
よし、まずは下級魔法クリア。次は中級のブリザラ。
今度はもっと呪文が複雑で詠唱も難しくなる。
唱えてみたものの上手く出来ず不発に終わった。ううむ、何がいけなかったのか。
何度も失敗を繰り返しながら何回目かの詠唱を始める。
すると一際大きな氷柱がズドンと現れてようやく成功したのだった。
できた、と疲れと達成感に満ちていると近くに人の気配がした。
ぱっと振り向けばそこには私と同じようなとんがり帽子を被った綺麗な女の人が立っていた。
随分とまあ美人な人だ、と感嘆して見ていると急にこちらに歩み寄ってきた。
そのままの勢いでがしっと両手を包み込むように掴まれるときらきらした目で見つめ返された。
「…あなた、すごい!すごいわ!
今の普通の魔法とは違うでしょう?どうやったの?何処で教わったの?」
「ええー…」
唐突過ぎてこんなまぬけな反応しかできなくて申し訳ない美人さん。
***
立て続けに繰り出される質問ラッシュに私は必死に答えた。
美人のお姉さんのお名前はヤムライハさんというらしい。
彼女も同じ魔法使いで私が修行してる様子を見て、いてもたってもいられなかったらしい。
何でも私の使う魔法はこことは少し違うようで、色々とそのことについて質問攻めにあっていた。
私の拙い受け答えに大きな綺麗な瞳を輝かせながら一心に聞いてくれる。
「で、教わった魔法について書いてあるのがこの魔導書なんですけど…。」
「え!見せて見せて!…どれどれ。」
ヤムライハさんは嬉々として私の隣にぴたりとくっついて魔導書を覗き込む。
いい匂いする、等と些か変態っぽい思考が頭を過ぎる。
「あら、全然読めないわ。」
「はい。これは私が暮らしてた所で使ってた文字なので。こちらの方は読めないみたいです。」
「じゃあはこっちの字の読み書きはできないの?」
「そうなんですが、今はジャーファルさんに教えて頂いてますからだいぶできるようになりました。」
「なるほどね。」
ヤムライハさんがふんふんと頷く。
その後も私の使う魔法について話したり私がヤムライハさんにこちらの魔法について質問したりした。
知れば知る程面白かった。
元々こちらの魔法についても勉強はするつもりだったけど、
こうして直接話を聞いてみてやっぱり改めて学びたいと強く思った。
「ヤムライハさん!どうか私を弟子にしてくれませんか?」
彼女の手を取り、決意を込めた目で見上げる。真ん丸に見開かれた大きな瞳には私の真剣な表情が写っていた。
「私、もっと魔法について知りたいことがたくさんあるんです!今まで学んできた魔法もこちらでの魔法も。
ヤムライハさんからお話を聞いて更に思いが強くなりました。どうかお願いします!」
ばっと頭を下げてお願いする。
するといきなり肩をがしりと掴まれ、驚いて顔を上げればさっきみたいに顔をきらきらと輝かせていた。
「こっちから言おうと思ってたのに!に先越されちゃったわ。」
「え?」
「あなたには素晴らしい潜在能力が秘められてるわ!
センスもいいし、これから絶対ガンガン伸びてくる筈。いいえ、私が伸ばしてみせる!」
「じゃあ、弟子にしてくださるんですか!?」
「もちろんよ!」
にこりと綺麗な笑顔で答えてくれた。
私は思わず嬉しくてヤムライハさんに抱き着いてしまった。
優しく受け止めてくれ、埋めていた顔を上げると私も笑顔で返事をする。
「これからよろしくお願いします、お師匠様!」
こうして私のクジャに続く新たな魔法の師匠ができたのでした。
「…うーん。その響きなかなか悪くないわね。」
「そうですか?」
14.1.25