目が覚めたら見知らぬ部屋にいた。
壁も床も真っ白なその一室はテーブルが真ん中にぽつんと置かれているだけで他は何も置いていない。
これは一体どういう状況なのか。
ふと気配を感じて振り向くとなんと隣に典明が倒れていた。
良くはないが一人きりじゃあなくてほっとした。とりあえず起こそうと彼の体を揺する。
「ん……あれ、?」
「おはよう典明。突然だけどこれどう思う?」
最初はぼんやりとした様子であったが、すぐに覚醒したのかがばりと勢いよく起き上がり辺りを見回している。
「これは一体…」
「わからない。私も気づいたらここにいて。典明も同じように倒れていたから起こしたの」
「そうか……、ケガはなかったかい」
「うん。大丈夫みたい。典明は?」
「ぼくもないみたいだ」
ひとまず二人に外傷がなくて安心する。でもまだなにも解決していない。
とりあえず中を調べようと慎重に辺りを調査してみた。
調べると言ってもそんなに広くはない部屋だ。すぐに終わってしまった。
窓はないし、出口は白い部屋によく目立つ赤い扉だけ。
ドアノブを捻ってみたが鍵がかけられているのか開かなかった。
それから置いてるものはテーブルひとつだけ。
おまけのようにテーブルの上には1枚の紙が乗っていた。
「なんだろうね。見てみようか」
「ああ」
うつ伏せてあった紙をめくってみるとそこにはこう書かれていた。
「どちらかが愛を叫ばないと出られない部屋です。
180分以内に実行してください?―なんじゃそりゃ」
「……もしかすると」
じっと紙を見ながら考えていた典明は徐にハイエロファントを出して、エメラルドスプラッシュを扉と壁に放った。
しかしびくともしない。きらきらとした緑色の塊が壁に扉にずぶずぶと吸収されていく。
「恐らくその指示にある通りのことをやらないと絶対に部屋から出られない、ということではないかな」
「マジですか……やっぱりこれもスタンドなのかなあ」
「たぶんね」
「相手を閉じ込めるってのはすごいけど指示通りにやれば出られるとかそれってどうなの?」
「ここにも書いてるように"180分以内に"という所が重要なんじゃあないか?」
「じゃあもし制限時間内にクリアできなかったら―」
「どうなるか分からないってことだ」
なんてこった。これは案外やっかいなスタンドかもしれない。
「そうと決まればさっさとやらないと!で、どっちがやる?」
「えっ」
「ほらどっちかが愛を叫ばないといけないんでしょう」
典明はおもしろいくらいに固まってしまったので、パン!と両手を叩いて正気を戻してやる。
飛んでいた意識が戻ったようなのでよしよしと頷いた。
「確かに愛を叫ぶなんてやりづらいかもしれない。相手も私だしやる気出ないかもだけど」
「いや!別にそういうわけじゃあ…!」
「よし、わかった。ジャンケンにしよう。負けた方がやるってことで」
完全に罰ゲームのノリだが仕方ない。時間は待ってくれないのだ。
まだ戸惑っている典明を放ってジャーンケンとお決まりの言葉を言えばそのままつられるように手を出した。
「ポイ!」
「あっ」
「はい、典明の負けー。じゃあよろしくね」
「ええー…」
「ささ、早く私に愛を叫んでくれたまえ」
「なんかその言い方嫌なんだが…」
へいへいカモンと両手でこいこいとポーズをとる。
典明はしばし迷い渋っていたが覚悟を決めたのか、ぐっと顔を引き締めるとがしりと両手をとられた。
「、好きだ。愛している!」
どうやら覚悟ができていなかったのは私の方だったようだ。
やだ、なんだこれ恥ずかしい!
思いの外どストレートにきた言葉に思わず照れてしまい「お、おう…」となんとも言えない返事をしてしまった。
「人がせっかくちゃんと言ったっていうのに―!」
「ごめんごめん!予想以上に照れがすごくて…でもこれでバッチリ開いたんじゃないの」
二人で扉の前に行き、典明がノブを回してみたがガチリと嫌な音がする。
「開かない……」
「嘘っ!なんで!?」
試しにノブを回してみるが、ガチャガチャと虚しい音が部屋に響くだけであった。
「ちゃんと指示通りにやったのに…なぜだ?」
「あれじゃないの。典明の愛が足りなかったからじゃないの」
「なっ、そんなことはない…!しっかりやれたはずだ!」
「そうなの?」
そこまで丹誠に言ってくれたのかと歓心したら「違う!あ、いや違わないけど…」としどろもどろになってしまった。
わかったわかったと落ち着かせて、さあどうすると考える。
まあ考えるまでもなくやることは一つなんだけれど、判断基準がどうにもシビアな気がする。
心をこめるとか本当の愛が足りないのかだとか、いろいろ思案してみるけどどうもしっくりこない。
そこで、はたと思いついた。
そもそもそんなにごちゃごちゃ考えて言うものではないんじゃあないかと。
「典明」
「なんだい」
「いつもありがとう。愛しているよ」
「なっ―」
不意打ちをくらった典明の後ろでカチリと扉の鍵が開く音がした。
すぐさまノブに飛びついて回せばいとも簡単に扉は開いたのだった。
部屋から見たことのある路地に出てきてほっと息をつく。
「いやあよかったねー。一時はどうなることかと」
「ああ、よかった。よかったんだがどうにも腑に落ちない」
「なにが?」
「なぜの言った時に開いたんだ」
「うーん、それはよく分からないけど私は気持ちを伝えるのに
頭で色々考えるより素直に言ったらいいかと思ってやっただけだよ」
「それって―」
「典明は大事な仲間だもんね。いつもお世話になっちゃってるもの」
だから感謝の気持ちも伝えたんだよと言えば
典明は片手で顔を押さえて「のことだからそんなことだと思ったよ」とどこか疲れた様子であったがなんでだろうか。
確かに変なスタンド(らしき現象)に巻き込まれて疲れたもんなあ。
「安心したらお腹空いたね。どっか食べて帰ろう」
「のおごりならいいよ」
「えー!私今回の功労者なのに!」
○○しないと出られない部屋
(どちらかが愛を叫ばないと出られない部屋)
16.8.12