キッチンにある机で本を読んでいたら、サンジに呼ばれて顔を上げた。サンジはこの船のコックさんである。
サンジの作るご飯はめっちゃうまいし、これ料理できんの?っていう食材もおいしくしちゃうし
おまけにスイーツまで作れるんだからもう天才としか言いようがない。ただ女の人に甘いのが少々難点だが。考察終了。まる。



「何?サンジ。」

にいいものをやろう。」

「いいもん?」



読んでいた本に栞を挟んでサンジの前に行くと、私の目線に屈み込んでほれ、と何かを差し出した。
じっと見てみるとそれはうさぎの形をした棒付きキャンディだった。



「うわっ!何これかわいい飴ちゃん!」

はお菓子が好きだろ?」

「おう!めっさ好きや!」

「ほしいか?」

「ほしい!」

「(期待を裏切らない食いつきだ)そうか。ならちょっと手伝ってくれ。」



そう言ってサンジは、にやと笑うとこれから夕食を作るからつまみ食いされないよう見張りをしてくれと私に頼んだ。
二つ返事で了承するとぐしゃりと私の頭を撫でてキャンディを渡してくれた。



「私が見張りをするからには虫ころ一匹たりとも近づかせんからな!」

「おう、頼んだぞ。」

「まかせろ!」





トントンと包丁の小気味よい音がキッチンに響く。
私は貰ったキャンディを口に含みながら、さっきの本の続きを読んでいた。
テーブルには次々とサンジが作った料理が所狭しと並んでいく。



「おー、今日はシチューかあ。」

「ん、確かはシチューだったよな?」

「大好きやでー。まあサンジの作るもんやったら何でも好きやけどな。うまいし!」

「へえ、嬉しいこと言ってくれるじゃないの。じゃ、特別にには先に味見をさせてやろう。」

「え!ほんまか!」



ほれ、とサンジがシチューを少しだけよそったスプーンを差し出す。
そのままスプーンにくわえついてゆっくり確かめるように舌に転がす。



「どうだ?」

「ちょーうめえ!」

「そうか。そりゃよかった。」



にこりとサンジは笑ってまた鍋の方へ戻っていった。
私もまたキャンディを舐めながら読書を再開する。
支度も終盤に差し掛かった頃、きぃ、と聞こえるか聞こえないかの小さな音を立ててキッチンの扉が開いた。
やはりというかそこには食欲魔人ルフィがいてこっそりと侵入してきたのだった。

サンジは多分気づいてる。
私も気づいていないフリをして神経はルフィの動きに注意しながら読書をしている演技をする。
そろりそろりと屈みながら近づいてきてテーブルに乗せられた料理に手を伸ばす。
私はルフィに見えない角度で指先を刃物に変形させた。
あとちょっとでお皿に触れるというところで私は無言で左手の刃をルフィの手と皿の間に突き立てた。



ガツッ



指先の刃は軽くテーブルに突き刺さり、手を伸ばしていたルフィはびくりと肩を震わせた。
ちらと私の顔を見てきたので私はにたりと嫌な笑顔で返す。



「あかんでルフィ、つまみ食いは。」

「何だよ。お前気づいてたのか!」

「当ったり前やないの。今は私が忙しいサンジに代わってつまみ食い見張り役やの。
 だからちょっとでも食べてみい、そん時はあんたの指一本落とすからな。

恐えぇ!てめっ、汚えぞサンジ!を買収したな!」

「人聞きの悪いこと言うなクソゴム!つうか性懲りもなくつまみ食いしにくるテメェが悪いだろ!」

「ごもっともな話やな。」



その後何度か攻防を繰り広げたが無事にルフィの魔の手から守り抜けた。(まったくしょうがない船長さんである)

大量にあった夕食はあっという間に完食されて(主にルフィの胃の中に)
テーブルの空いた食器をチョッパーと二人でキッチンへと運び込んだ。
その沢山の食器をサンジが洗って、私は隣で食器を拭く係をした。
たまに洗う側もやったりするが、サンジの方が断然早くて綺麗なので専らお手伝いは拭く係である。



「いやあ今日もご飯めっちゃうまかったなー。」

「そうかい。そりゃどうも。」

「明日はあれ食べたい。オムライス。」

「じゃあ明日の昼飯に作ってやるよ。」

「やったー。あ、私最後の仕上げのケチャップ文字やりたい!」

「わかったよ。好きにやればいい。」

「よっしゃー。楽しみやなあ。」



フンフンと鼻歌混じりで食器を片付けてたら、サンジにガキだなあと苦笑された。
まだガキだからいいんだよ、と返したらそうかよ、とまた笑われた。
片付けが終わった後にサンジはココアをいれてくれた。
生クリームが上に乗っかっていてすごいうまい。
サンジはやっぱり天才だと思った。













わたしのくらし。(コックさんといっしょ)










おまけ(翌日のオムライスのケチャップ文字)




「今日のオムライスの文字は私が担当致しました!」

「おれ“肉”って書いてある。」

「ルフィといったら肉でしょ。」

「おいこら、俺の“マリモ”って書いてあんぞ。」

「俺は“鼻”って、もっと他にあるだろうが!」

「えー、だって思いつかんかったし。」

「私のは“お姉様”だわ。」

「ロビンは尊敬するお姉様やからね!」

「ふふ、ありがとう。」

「私は“おこづかいもっと増やして下さい。”って私のだけもう文章じゃない。」

「ナミには私からの熱いメッセージやで。」

「ダメよ。」

「即答!?」

「おれのは……うお!これおれの似顔絵か!?」

「うん。チョッパーのは特に力入れて書いたぜ!」

「ありがとな!でも食べるのもったいねぇな。」

「ひいきだー。」

「差別だー。」

「おだまりお馬鹿さんが。区別といって頂きたいね!」

「あれ、サンジのは普通だな。」

「ああ、“ぐる眉”って書こうとしたら全力で阻止されたので諦めました。」

「当然だろ。」

「「「(自分のだけは死守したのか……)」」」



















サンジさんと絡む回。
夢主も一応女の子なのでまだ対応は優しい方。しかしたまに辛辣。

10.7.17