「でっかくいきろよ」

「おとこならー」

「よーこみちそれずに」

「まっしぐらー」

「かーげきにいきてる」

「おとこならー」

「はーとはいつでも」

「まっかっかっかっかー」

「もーえてるさー」

「なみだをみせちゃいけないよー」

「そのとおり(合いの手)」

「かんぜんむてきまけないさー」

「たーちむかえー(合いの手)」

「しょーぶはつらいよー」

「まよってられないー」

「「ゆうきときりょくでたーちむかーうー」」

「ばばんばん」

「ばばんばん」

「はばんばーんとばとるだー」

「たいけつ!はくねつ!」

「どこまーでもあついよー」

「せめろせめろせめろ!」

「そこだそこだそこだ!」

「ちえとゆうきでかちのこれー」

「………。」

「………。」

「釣れないなあ。」

「釣れへんねえ。」



船の手摺りに座って釣りをし始めて、どれくらい経っただろうか。
今までの収穫は小さな魚が一匹。これじゃあ腹の足しにもならない。



「うーん、せっかく熱い歌で盛り上げて釣ろうと思ったんだけどなー。」

「やっぱあれなんちゃう?選曲が悪かったんやで。」

「えー!メ●ロットのどこがいけないんだよ!」

「確かにメ●ロットは熱いええ曲や。でもさっきは真っ●な誓い歌ったやろ?
 せやから魚からしたら2曲連続で熱い歌かい!もうええっちゅーねん!暑苦しっ!
 こちとら茹だってまうやろがいカス!ええ加減にせえよ!てなもんなんやできっと。」

「あ〜。なるほど!言われてみればそうだな!」

「そうやろ。だからここは一つ魚の気持ちになって、今度はお●かな天国を歌ったらどうやろか?」

「おお!それはいい考えだな!よしじゃあ再開だ。」


「すちゃっちゃすちゃっちゃすちゃっちゃららら」

「おい待てよ。イントロはやらなくていいだろ。」

「うおう、そうやね。じゃあ飛ばして(イントロ略)すきだといわして」

「さよりちゃん」

「たいしたもんだよ」

「すずきくん」

「いかしたきみたちみならって」

「ぼくもかれいにーへんしんすーるよー」

「ヘイヘイヘイヘイ!(合いの手)」

「さんま ほたて にーしんー」

「きーす えび たこー」

「まぐろ いくら あなご しまあじー」

「さかなさかなさかなー」

「さかなーをーたべーるとー」

「あたまあたまあたまー」

「あたまーがーよくーなるー」

「さあさーみーんなでーさかなーをたべようー」

「さかなはぼくーらをーまってーいるー」

「おー!」

「……。」

「……。」

「釣れねえぞ。」

「ぴくりとも竿動かんなあ。」

の選曲がまずかったんじゃねえのか?」

「えー、そんなはずは……ってよう考えてみたら魚サイドからしたら何俺達食う歌なんか歌っとんねん!
 むしろそれ俺ら殺戮推奨する恐怖ソングやろが!海沈めたろかワレェ!てなもんやったわ。」

「ああ!考えたらそうだなー。じゃあ何の歌がいいかなぁ。」

「そうやなー。ここは一つ演歌で渋めにいっとくかー。」

「お、いいなそれ!じゃあ……」


「「「お前ら釣りに歌関係ねーだろ!!」」」









*****











「……とまあ、一部クルーから華麗に総ツッコミを受けたことやし、歌って★大漁作戦は中止やな。」

「なかなかいい案だと思ったんだけどなあ。」

「やはりここは地道に待つしかあらへんのちゃう?」

「そっか、仕方ねえな。」



一旦釣り糸を手繰り寄せて、餌を付け替えてからまた海に垂らした。
ルフィはぶらぶらと足を所在無さげにばたつかせている。私もぷらぷらと足を揺らす。裸足なので直に当たる風が心地好い。
一回サンダルを履いている時に足ぶらぶらをやってたら見事にサンダルがぶっ飛んで海の藻屑になり
ナミにげんこつをくらったのでそういう時は靴を脱ぐようにしている。
(ナミのお叱りは肉体的にも精神的にも辛い)



「あー……暇やなぁ。」

「釣りしてんだから暇じゃねえだろ。」

「そうやけど、この待ち時間が暇やねん。」

「そうだなー。じゃあ歌うか?」

「歌うんはもう飽きたなー。」

「んー、じゃ、しりとりするか?」

「いいで、じゃあ私からな。しりとりの“り”からでりんご。」

「ゴム」

「虫」

「シシカバブ」

「ぶ?ぶ、ぶ、ブイヨン!あ、しまった“ん”ついてもうた!」

「ん、ん、えーと、ンジャメナ!」

まさかの”ん”返し!?ルフィすげえなおい!てかしりとりのルール知ってんのか!」

当たり前だろ、お前ばかか!言葉の最後の文字で単語つくっていきゃいいんだろ?」

「合ってるけど肝心のルールが雲隠れしとるやんか!”ん”が最後についたらあかんの。つーかお前がばかか。

「あー、そんな特殊なルールあったようななかったような。」

「それが一番重要やろ!これなかったらしりとり無限ループやないか!
 何の遊びやねん!もうルフィがしりとりの常識覆したから強制終了な。」

「えー!わがままだな。」

「ルフィがあほやからしゃーないやん。」

「失敬だな!」



ぶつぶつと頬を膨らませて(何歳だあんた)何か文句を言ってたが、完全にスルーしてたら諦めて黙り込んだ。

しん、とした静寂が辺りを纏う。

よくよく耳を澄ませたら、波の音やゾロが鍛練する動き、ウソップが新しい弾を作る実験を失敗した爆発音や、
気合いを入れたらサンジの昼ご飯を支度する音まで聞こえてきそうだ。思ったより此処は沢山の音や気配で溢れている。
静かなんてことはなかったのだ。まあしかしこちらが暇なのには変わらないのだけれど。

ちらりと横目にルフィを見たらよく分からない鼻歌を刻みながら何やらご機嫌さんである。

我が麦わら海賊団の船長、ルフィはこの濃ゆいクルーを束ねるだけあって相当な変わり者である。
口を開けば肉だの飯だの言ってめちゃくちゃよく食べる。
どっからその体力出てきてんのっつうくらいタフだし(それはルフィに限ったことじゃあないけれど)、
あらゆる面倒事を引き寄せてくるようなトラブルメーカーでもある。
突拍子のないアホな発言をするかと思えば、物凄い核心を突くこともあるし
ルフィを語ろうと思えばいくつもの事項が溢れてきて収まりがつかない。
ただ言えることはルフィがなによりも仲間思いで頼れる不思議な船長気質を持っている事は確かである。
(彼はそれだけ人を魅き付ける能力があるんだと思う)
あ、あと悪魔の実の能力者でゴム人間だってことも一つ。考察終わり。まる。



「何だ、ぼーっとして。」

「暇すぎてルフィに関する考察をしとった。」

「なんだそれ。」

「要するにルフィはなんでそんなアホなんかなーって考えとったってこと。」

「失礼だな!おれはアホじゃねえ!」

「じゃあばか?」

「ばかでもねぇ!ばかって言うやつがばかなんだぞばか!」

「じゃあ今の結局ルフィがばかなんやないか。ばーかばーか。」

「なんだと!このばーかばーかばーかばーか!」

「うっざ!ばーかばーかばーかばーかばーか!」

「ばーかばーかばーかばーかばーかばーか!」

「ばーかばーかばーかばーかばーかばーか、あれ何回言ったっけ?ばーか!」

「言った回数忘れるなんてやっぱりはばかだな。ばーかばーかばーかばーかばーか、あれ今何回目だ?」

「やーい、ルフィも忘れとるやんかアホー。ばーか。」

「うっせえ!お前が一番ばかだ!」

「いやいやお前がばかだばか!」

「いやお前が「しつこいわよあんた達!子供か!!」

「「痛いっ!!」」



ナミにグーパンされた頭をさする。
だって私まだ子供だし、と口答えしたらもう一発かまされそうになったので慌てて平謝りした。



「ルフィがガキなせいで怒られたやんか。」

「いやいや、今のはのせいだろ。」

「だって私まだ子供やしー。ルフィの方が年上なんやから譲歩せなあかんやん普通。」

に限っては歳の差なんて関係ねえ!(どーん)」

んな効果音付けて偉そうに言うな!何でやねん!いじめか!



ぎゃいぎゃい言い争っていたら、またナミの怒りの鉄槌が飛んできそうなので私が折れてやることにした。
(私の方が子供やけど精神はルフィより大人やからな!)


また再びぼうっと釣り糸を眺めてからはた、と気がついてポケットをまさぐった。
目当てのが見つかり1個は自分用に取っておき、もう1個をルフィに差し出した。



「はい、ルフィあげる。」

「ん?なんだ?」

「飴ちゃん。ただ待ちぼうけも退屈やしな。」



はい。とルフィの手の平に飴玉1個を転がす。
じっと手の飴玉と私を見比べた後ぎゅっと握って素晴らしい笑顔で「ありがとな!」とお礼を言ってくれた。
ぺり、と包装を剥がして口に放り込む。舌で転がせばすぐに口いっぱいにブドウ味が広がった。
ルフィも同じように包装を取って口に入れていた。



「お、なんだこれ。なんか色んな味がする。」

「お、当たりやな。それミックスフルーツ味や。
 これ1袋に1個しか入ってへんからめっちゃレアやで!」

「そうなのか!ラッキーだな!」

「おー、今日はきっとツイてるねんで。なんかええことあるんとちゃう。」

「でももう夕方だぞ。」

「うんにゃ、これからこれから。」



からからと笑って、足をぶんぶん蹴り上げた。
そうか?なんて言いながらルフィも足をばたつかせる。
ころころと転がした飴が小さくなったので奥歯でがりっと噛み潰した。

真っ赤に染まった太陽がもうすぐ海に沈もうとしている。



ルフィの竿に大物がかかるまで後3分。












わたしのくらし。(船長さんといっしょ)












「うおおぉ!すげえ大物きたー!!」

「何やて!ルフィがんばれ!!」

「おれ、丸焼きがいい!」

「私刺身!」

「作ってやるからさっさと釣れ。」
















ルフィさんと絡む回。
脳内年齢がほぼ同じなのでよく一緒に何かしてる。
前半の曲はただの趣味です。←

10.7.17