島に着いたぞー!という船長のお決まりの台詞を聞いて、読んでいた本に栞を挟んで部屋を飛び出した。
今日の船番はゾロとサニーの点検補修をしたいというフランキーの二人に任せて私達は島に上陸する。
今回の島は春島だからか、気候もちょうどよくて穏やかだ。
ナミ達と暫く街を見て回り(いつものルフィ達3人組は冒険だとか言って走っていった)、買い物なんかを楽しんでいた。
気づいたら両手に沢山荷物を抱えており、このまま移動し続けるのは大変だ。
「ナミ、ロビン。私一回買い物した荷物船に置いてくる。」
「そうね、確かにこれ以上はきついわね。」
「うん。まだあっちのお店も見てないししょうがないか。」
「えぇ!まだ買うん!?」
「当たり前じゃない!この間久しぶりにおっきな収入が入ったんだからパーッといかないとねー。」
「……私達の小遣いはきっちり絞ってるくせに。」
「何か言った?」
「言ってませーん!すぐ置いてきまーす!!」
ナミが恐ろしい顔で睨んできたので、慌てて荷物を抱えて走り出した。
(背後になんか黒いオーラが見えた)
後ろからロビンのクスクス笑い声が聞こえて、
同時にナミの寄り道しちゃダメよー!知らない人に着いてっちゃダメだからねー!という声に背中を押された。
もうそんなガキじゃないっつーの!なんて抱えた荷物が多すぎて言う余裕もなく心の中で叫んでおいた。
*****
船に乗り込むと、ゾロはやっぱり甲板の縁にもたれて眠っていて、フランキーは金づち片手に船の修繕を行っていた。
私が帰ってきたのに気づいたフランキーが傍に寄ってきて、持ち帰った荷物の量に目を丸くする。
「お前らこんなに買い物してきたのかよ。ちょっと多くねえか?」
「私もそりゃ多いと抗議したんやけどね。まあナミ達には逆らわれへんし……。」
「……そうだな。そういや帰ってきたのだけか?」
「うん。私は一旦荷物置きに来ただけ。またすぐ戻るよ。」
「げ、まだ買う気かよ。」
「同じ台詞言うたよ私も。まあ買い物が楽しいんは分かるよ。女の子やしねー。」
「そうか、は女の子だったのか。」
「どういう意味やねん。殴んぞコラ。」
ぐっと握り拳をつくったら、フランキーは冗談だよ、とからから笑った。(どうでしょうかねー)
じとりとした目で睨んでから、荷物を女部屋に押し込んだ。
「じゃあ私また行ってくるからー!」
「おう、ほどほどにしろよー。」
「私に言われても困るわー!」
船を降りて駆け出す。
うーん、ちょっと遅くなったかなあ。
走る速度をなるべく早くして急いでナミ達の元へ向かった。
*****
一方、ルフィ達好奇心旺盛3人組は街をぶらぶらと適当にうろついていた。
時折、珍しい食べ物や建物なんかに寄り道しながら。
「見ろ!ウソップ!あそこの屋台すげーうまそう!」
「お、本当だなーっておいルフィ!いきなり走って行くな!!」
ばたばたと突撃していく自由奔放な船長を追いかける。
しかし制止も虚しく向かいから歩いていた男の子に勢いよくぶつかった。
あーあ、言わんこっちゃない。
隣を一緒に走っていたチョッパーと顔を見合わせてため息をつくと急いで当人達の元へ向かった。
「おら、ルフィ!お前が無神経に走り回るから!」
「大丈夫かお前、立てるか?」
「いやあ、すまんすまん。」
「お前はもっとちゃんと謝れよ!」
「痛つつ……。」
チョッパーが心配そうに男の子を覗き込む。
まだ見た所幼い、と年がそんなに変わらなそうだ。
尻餅をついて腰をさすりながら男の子が顔を上げる。
すると男の子はみるみる内に驚愕の表情に変わった。
がばりと立ち上がったのに少し驚くと今度は震えながら指をさしてきた。
「あ、あなた達…もしかして麦わらの一味ですか!?」
「え?ああ、そうだけど。」
「やっぱり!あなたは麦わらのルフィ、そこのたぬきさんがチョッパー、それからえーとあなたはいましたっけ?」
「いるっつーの!狙撃の王様、ソゲキングことウソップ様だ!」
「ああ、そうでした。これは失礼しました。」
「つかおれはたぬきじゃねえ!トナカイだっ!!」
ぷんすか怒るチョッパーに男の子がまたすみません、と謝っていた。
「いやあそれにしてもよく知ってんなあお前。」
「いえ、まあ有名ですし。それに……ってああ!そうだ!あなたたちの中にっていう女の子いますよね!?」
「ああ、いるぞ。」
「やっぱり…!よかった、無事だったんだ……。」
胸を押さえて心底安堵したというような表情で男の子は息を吐いた。
最初お尋ね者のおれ達を通報するのかと思ったがどうやら違うらしい。何か事情がありそうだ。
「何だ、お前の知り合いか?」
「はい!さんは僕の命の恩人なんです。」
「「「命の恩人〜?」」」
三人揃って声を上げたおれ達をくるりと見渡すと、はい、と笑顔で答えた。
あのが命の恩人なんてどういうことだ?
「あの、ところでさんはどこですか?できたら会ってお話がしたいんですが……。」
「あー、は今ナミ達と買い物に行ってるからな〜。」
「私達が何ですって?」
「うお!ナミ!ロビン!」
「すげえいいタイミングで来たな。」
急に背後からかけられた声に驚いて振り返れば、ナミとロビンが立っていた。
いるのは二人だけで一緒に買い物に着いて行ってたの姿が見当たらない。
「あれ、はどうしたんだよ?」
「は一旦船に荷物を置きに行ってもらったんだけど、なかなか戻ってこなくって。」
「あの子まーたどっか寄り道してんじゃないかしら。私があれ程注意したっていうのに!」
「―だってよ、って、そういやまだお前の名前聞いてなかったな。」
「あ、そうでしたねすみません。僕はムツっていいます。」
「ふーん、そうかムツか。」
「この子は誰なの?」
「ああ、何でもの知り合いらしい。ムツの命の恩人なんだとよ。」
「命の恩人?」
「何で命の恩人なんだ?」
ルフィが皆気になっていたであろうことをズバリと言えば、ムツは少し表情を曇らせた。
どうした、と問おうと口を開いた瞬間ぐごぎゅるるーという凄まじい腹の音によって遮られた。
……こんな腹の音出すのとこの空気を全く読まないタイミングでやるのは一人しかいねえ。
「自分で話題振っといて盛大に腹鳴らしてんじゃねえよ!」
「だって腹減ったんだからしょうがねえじゃんか!」
「まったく本当に空気読めないんだから!」
「あはは、じゃあ是非うちに来て下さい。
うち酒場やってるんです。話もそこで致しましょう。」
「そうか!んじゃそうしようぜ!」
「それじゃあ私はを探してくるわ。
あっちも私達のことを探してたら困るでしょうし。」
「うん、ありがとうロビン。お願いね。」
のことはロビンに任せて、おれ達はムツの案内の元で店へと向かった。
――まだその時はこの後起こる事なんて当然予想がつく筈もなかった。
何処からか生温い風がひゅうと肌を撫ぜていった。
いつかのはじまり。
夢主の過去編始まりました。
後半の語りは一応ウソップのつもり。
10.8.14