すうっと静寂が辺りを包む。
は両手を上げると、刃の形に変化させる。


―くる。


纏う空気が変わった瞬間、はもう踏み出していた。
まっすぐルフィ達の元に走り出し、構える彼らの前に着く瞬間飛び上がる。
頭上から串刺しにするようにその猟奇的な腕を振り下ろした。


ボゴッ―


軽く床にクレーターができた。
その尋常じゃない力にルフィ達は目を丸くした。



「うそ!いつものより力が上がってる!?」

「大方あいつの薬のせいだろうな。気をつけろよ!」


襲いくるクリーチャーに応戦しながら、ウソップが叫ぶ。
は体勢を立て直すと、ひゅっと身軽にまた駆け出す。

狙いはルフィだ。

ルフィの前に踊り出ると次々と攻撃を仕掛けていく。
なんとかかわしながら反撃の隙を窺う。

パシッ、かわすために出した手に掴まれたが一瞬よろけた。

今がチャンスとルフィは拳を握った。
振り上げの顔を見た瞬間、


―ルフィ。


自分の名前を呼ぶいつものの笑顔が今のとダブって見えた。
躊躇した隙を見逃さずは腕を振り上げ、衝撃波でルフィを吹き飛ばした。
鈍い音と共に壁にぶつかる。


「ルフィ!」



皆が叫び、一番近くにいたサンジが彼の元に駆け寄った。
壁にぶつかったがさほどダメージはなさそうだ。
もたれるように座り込んでいるルフィの傍に寄る。


「大丈夫かルフィ。」

「……できねぇ。」

「あ?」

「できねぇよ。のままなのに。
 あいつを…殴ったり、倒したりするなんて……。
 だからを目を覚ます為に、そう思ったっていざ目の前にすると殴れない。
 だってあいつは俺達の知ってるなのに!」


ルフィが悲痛な声を上げ壁に拳を叩きつけた。
サンジにはその気持ちが痛い程理解できた。
いや、サンジだけでないナミもウソップも他の仲間もそうだろう。


を助けるにはあのクソ野郎を潰すしかねぇ。
 でも皮肉なことに今は一番恐れてたが奴を守っている。」

「どっちにしろあいつを倒さねぇと
 は助けられない。ならあいつを何とかして倒す!」


ぎっ、と決意したようにドクターを睨みつける。
相変わらずにやにやと嫌な笑みを浮かべ、まるで観戦するかのように眺めている。


「決まりきったことだな。」

「おう。」


立ち上がり再び構えたルフィ達をが感情の読み取れない目で捉えた。




*****




激しい応酬が続いた。

ルフィ達はドクターを狙うが、と他のクリーチャーがそれを阻止する。
には危害を与えれない為、つい防戦にはしりなかなか思うように攻撃できない。


「くそっ、うまく当たらねぇ。」

「他の奴とが全力で阻止してくるからな……。」


じれったそうにルフィ達は歯噛みする。
そんな様子をドクターは笑いながら見ていたが、ぴたりと笑みを消してに命令した。


「もういいぞ。それそろ飽きた。さっさと始末しろ。」


こくりとが頷く。そしてまたドクターはにやりと笑った。


「特別に私も手を貸そう。彼らは私と遊びたいらしいからな。」


くつくつと不気味に笑うと次の瞬間
ドクターの背中から無数の蛇のような触手が生え出してきた。


「うげえ。なんだありゃ。」

「ますます化け物屋敷だな。」

「私もいわば成功者。力を手にしたのだよ。強い力を!」


ぐわっと触手がルフィ達目掛けて襲いかかる。
間一髪避けたその場所にはボコボコと穴が幾つも空いていた。


「またやっかいね。」

「でも、これでやりやすくなった!」


ルフィとサンジがドクターに突っ込んでいった。
サンジの蹴りがドクターに入る。
だが寸前で触手に巻き取られてしまい、そのまま吹っ飛ばされてしまった。


「サンジ君!」

「こんにゃろ…!」


ルフィもゴムゴムの銃を繰り出すが
またもあの触手が瞬時に伸び、ルフィの腕を突き刺した。
その勢いのまま床にたたき付ける。


「……ってぇ!」

「くそ!何とかしてあいつを押さえ込まないと……!」


他のクリーチャーを相手にしながらウソップとナミはどうにかしようと体勢を整えようとした。


「おや、よそ見していていいのかね?」


音も無く何かが近づいてくる。
二人がはっとしてそれに気づいた時はもう遅かった。
ウソップの懐にが飛び込む。鋭い刃がその腹に向けられる。







ドシュ








「まず一人目―。」




ウソップの腹にの刃が深く突き刺さった。










散らせてそして咲かせましょう。







11.7.2