※流血表現注意












赤い赤い鮮血が散る。




ウソップはゆっくりと自分に刺さる刃を、そして刺した張本人のを見やる。
誰もが信じられない、といった驚きの目でその光景を見ていた。





「ウソップ!!」




ふとその場にはいない外部からの声が飛び込む。
ゾロとチョッパーが驚き慌てて中に入ってきていた。

ぴっ、との顔に血が飛ぶ。
その顔は微動だにせず、ただ無表情のままだった。
ウソップから刃を引き抜くと、くるりと方向転換する。
次に狙いを定めたのはナミだ。


「…!」

「まずいナミさんが!」


崩れ落ちたウソップをチョッパーとルフィが受け止めた。
サンジも慌ててナミの元へ行こうとするが、のスピードの方が早い。
素早くナミの前に来ると、が刃を振り下ろす。


ガチン―!


呆然とするナミにの刃が当たることはなかった。
振り下ろす直前にゾロがその刃を受け止めたからだ。


「おい!テメェどういうつもりだ!」

「……。」


ブン、と一旦止めてから間合いをとり体勢を立て直す。
ゾロを写す眼は虚ろで真っ赤に濡れたままだ。


「……今のには何を言ってもダメよ。」

「どういうことだ?」

「あそこにいるドクターって奴がを苦しめてた張本人。
 そいつがに妙な薬を使って操ってるの。私達の声も届かない。」

「ちっ…、成る程そういうことかよ。」





*****





「ウソップ!しっかりしろ!」

「ルフィ、あんまり動かすな!今俺が診てみるから……。」


チョッパーがルフィを諭し、傷の具合を診はじめた。
その時僅かにウソップの指が動いた。


「……か、は……げほっ!ごほっ!」

「ウソップ!」

「…な、俺、生きてる…よな…?」

「大丈夫だ、今チョッパーが診てくれてるからな!」

「いや、違うんだ…。確かに俺は、に刺されたけど……」



ウソップがたどたどしく話す言葉に皆が聴き入る。
そろりと辺りを見回してからややあとまた口を開いた。



「痛い、んだけど…不思議と酷くはない気がして…。
 うまく言えないが、本当に…これが刺されたのかって、感じなんだ……」


顔を歪ませながらそう言ったウソップに誰もが目を見張った。
チョッパーが手当てをしていたのを止めて、少し泣きそうな表情で言う。


「ウソップの言う通り、見た目程傷は深くないよ。俺、あの時見たんだ。
 皆からは角度的に見えなかったかもしれないけど、
 はウソップを刺す瞬間、刃の形を変えたんだ。中身を傷つけない細いものに。
 だから驚くくらい中の臓器にも傷ついてないし、血は刺したから出たけど致命傷じゃない。」


「ということは……」

はウソップを殺そうとしなかった。
 まだは完全に支配された訳じゃない。意識の底で操ろうとする脅威と戦ってるんだ!」




弾かれたようにを見やった。
まだ操られた時と変わらない様子だったが、
チョッパーやウソップが言うことが本当だとしたら…?


「そうだ、はそんなもんに負ける程ヤワじゃない!」

「ああ、俺達が弱気になってる場合じゃねぇってこった。」

「チョッパー、ウソップのこと頼んだぞ。」

「わかった!」



再び達と向き直る。
さて、どうやってを助け出す。
皆、一様に構える中冷たい空気つうとどこからか流れた。



*****



戦況はあまり良いものとは言えなかった。
本来の彼らならこれしきの敵など、あっという間に倒せている筈で。
しかしそれができないのは偏にが敵として存在していることにあった。
薬のせいで操られている上に、更に身体能力まで向上しているのだから厄介である。
そんな膠着状態が続いて、ついに痺れを切らせたのがドクターだった。


「ちっ、何を手間取っておる。早くあいつらを始末しろ!」

「……。」

「少々面倒だが私も奴らを押さえてやる。いいか、必ず仕留めろ。」



ドクターとクリーチャーが一斉に襲いかかる。
ドクターの思わぬ攻撃に一瞬動きが鈍り、勢いよく吹き飛ばされる。
それを黙って見ていたが動き出す。狙いは一番近くに飛ばされたナミだ。


「…っ、ナミ!」

「え?きゃあ!」


吹き飛ばされたダメージの余韻で反応が遅れたナミは、
が振り下ろした刃をクリマタクトで何とか防いだが、それをそのまま弾き飛ばした。
尻餅をついたナミの前に立ちはだかったは赤い目でじっと見下す。
それもつかの間、はナミの頭上へ刃を一気に振り下ろした。


「ナミ!!」

「―っ!」


ナミは頭を抱えぎゅうと目をつむり、次にくる衝撃を待った。
しかし、いくらたっても痛みも何もやってこない。
恐る恐る目を開けたナミは驚きに目を見開いた。




床にぽたりぽたりと落ちる血。


その血はの腕から滴り落ちているものだった。

は振り下ろした刃の右腕を自分の左腕を刃に変えて刺していたのだ。
自分で自分を刺す、という行動に誰もが驚いていた。





「何をしている!さっさとそいつを殺せ!」

「……せん。」

「あ?」

「…できま、せん。……やりたくない!」

「何を!」


いつの間にかはその真っ赤な目から涙をぼろぼろと零していた。


……?」

「ご、めん…ナミ、早く…逃げて……。」

「薬の効き目が薄れてきたか!くそっ!どけ!」



がん、と周りを蹴散らしながら猛然とドクターが迫ってきた。
達の前に瞬時に移動する。


「まだお前は分からないようだな!
 なら見ているがいい、仲間が一人ずつ死に逝く様を!」

「逃げろナミ!」

「!」

「遅いわ!」



ドクターの鋭利な触手の矛先がナミに向けて一直線に伸びる。


ダメだ。


誰もがそう思い絶望した瞬間だった。

ふ、と何かがナミの前に立ち塞がった。




ザシュッ―




触手が何かの腹を貫く。
その何かを目に捉えた時、皆驚きの色に染まっていた。




「……!」



立ち塞がっていたのはだった。
ナミを庇うようにして立ち、その腹からは触手が突き刺さり大量の血が滴り落ちていた。













その手は守るために。










そろそろ終盤です。

11.7.2