※流血表現注意
「!」
ドクターが放った触手はの腹を貫いていた。ぶるぶると震える手ではそれを掴む。
「貴様!何を…!」
「…私は、死ぬことが何よりも嫌やった。
お父さんがお母さんが命を懸けて守ってくれた大事な命だったから。
どんな汚い事をしてでも生き延びようとした。でも……。」
ぐっと力を入れて握り締める。めりめりと嫌な音がした。
顔を上げてはドクターを思い切り睨みつけた。
いつしか赤く染まっていた目は力を燈した元の色に戻っていた。
「それ以上に大事な仲間を犠牲にしてまで私は生きたくない!!」
「おのれ…!」
額に青筋を浮かべたドクターがを刺したまま、空中へと持ち上げる。
「…くそっ、この出来損ないめ!
あれ程私が手塩にかけてやったというのに!もういい!お前なんか用無しだ!!」
「…っ!」
ブオン、とそのままを投げ飛ばした。
更に追い撃ちをかけるように触手をに向けて勢いよく伸ばした。
ああ、今度こそ死ぬ。
お父さん、お母さんごめんな。
でも仲間の為やったらきっと許してくれるよな……?
ぐっと目をつむり次にくる衝撃に備えた。
ところがいくら経っても壁に激突するはおろか体を貫く痛みもない。
それどころか私は暖かな誰かの腕にしっかりと受け止められていた。
恐る恐る目を開けて見れば、目の前にはゾロとサンジの背中があった。
二人がドクターの攻撃を防いでくれている。
はっと顔を上げればルフィが私をしっかりと抱き留めてくれていた。
驚きに目を見開いていると、ルフィが私の視線に気づいた。
「大丈夫か!!」
「……ルフィ。」
「待ってろよ、今すぐあのクソ野郎をぶっ飛ばしてきてやるからな。」
「サンジ…。」
「お前はよくやった。後は俺達に任せとけ。」
「…ゾロ。」
皆が立ち塞がって私を守ってくれている。
ひとつひとつかけられた言葉が、じんわりと心の底に染み渡っていった。
「ぐっ…!おのれ、貴様らまだ邪魔をするか!」
「はお前の道具でも何でもない。
俺はを傷つけたお前を絶対に許さねえ!!」
ルフィが私をナミに引き渡すと、ドクターに向けて叫んだ。
その言葉にまた胸を締め付けられ、同時に自分の置かれた状況にふっと引き戻される。
「げほっ…」
「!待って今すぐチョッパーが治療してくれるから!」
ナミが私をチョッパーの元へ運んでくれた。
慌てて駆け寄り名前を呼んでくるチョッパーを見やる。
「大丈夫だ、すぐ治してやるからな!」
「バカ!あんたあんな無茶して…!」
「……ごめん、でももう誰も傷つけたくなかった……。」
首を横に向ければ同じように横たわるウソップが見えた。
「ウソップ、ごめん、私があんな目に合わして…!」
「ばっか…!お前こんなの全然平気だっての!ぐふっ!」
「わー!ウソップ急に起き上がったらダメだろ!」
ウソップが私を慰めようと起き上がって
大丈夫アピールをしたが、傷口に負荷がかかり思いっ切り血が吹き出してしまった。
「ウソップなら大丈夫よ。
がぎりぎり逸らしてくれたから。私のことも助けてくれたじゃない。」
ふわりとナミが私の頭を撫でた。柔らかいその空気にあてられて、目にゆっくりと涙が滲む。
「はで戦ってた。だから何も心配いらないわ。
後はルフィ達があいつをぶっ飛ばしてくれるから。」
「ナミ……。」
安心感に包まれたつかの間、激しい痛みに現実に引き戻された。
咳込めば口から血が吐き出され、腹からはじわりじわりと血がとめどなく溢れ出す。
「!しっかりして!」
「出血が酷い……。
早く船に戻ってちゃんとした治療をしないと…!」
皆の話し声が遠くに聞こえる。
ああ、いよいよまずいかもしれない。
痛みも通り越して感覚が無くなってきた。
靄がかかったように霞む意識の中、
最後に見えたのはルフィの怒鳴り声とドクターが激しく吹き飛ばされている姿だった。
届いた光。
11.10.9