ドゴォ―!






ルフィの拳によってぶっ飛ばされたドクターは壁を貫き、
そのまま瓦礫に埋もれてぴくりとも動かなくなった。

皆、傷だらけの姿だったがそれはいつものこと。
ただ違うのはウソップとが手酷い怪我を負っているということだ。
ルフィ達がとウソップの傍に駆け寄る。


「大丈夫か!」

「おう、ルフィよくやった!
 俺はチョッパーが手当てしてくれたからだいぶ楽になった。だけどが……。」


ウソップが横たわるに目をやった。
その呼吸は荒く、顔色も優れなかった。大量の血を流した為か肌が青白い。


「早くちゃんとした治療を始めないとまずいぞ…!」

「よし、早くここから出よう!」


ルフィがを背負い、サンジがウソップを支え、
その場から離れようと足を踏み出した瞬間、ぐらりと辺りが揺れ出した。


「な、なんだ!」

「…地震!?」

「いや、それにしては何か……。」

「おいお前ら無事か!」


フランキーとロビンがこちらに駆け寄ってきた。
さっと周りの状況を確認すると、ルフィの背に負ぶさっているを最後に見て苦々しい表情になった。


「ちっ、なかなかスマートには事が運ばないもんだな。」

「早くここから脱出しましょう。
 この建物、崩れだしてるみたい。長くはもたないわ。」


ロビンの言葉に皆頷いて、研究室を後にした。
急いで出口を目指しながらも、ルフィは背負っているに負担がかからないよう慎重に足を進めた。
背中に伝わる体温を失わないように。

ガラガラと音をたてながら、研究所が崩れていく。
彼女の過ごした辛い日々も沢山の犠牲になった人も飲み込んで。








「やっと、やっと自由になれたんだ!だから絶対に死ぬな!!!」






















*****


















ふわり、と意識が浮上する。

恐る恐る目を開ければ何も見えなかった。いや、辺り一面真っ暗なのだ。
深い深い闇を流し込んだような空間に私はいた。

こうも何も見えないのでは、本当に私がここに存在しているのかも怪しい。
まあ、意識があるから多分いる、ということか。
それにしても何故私はこんな場所にいるのか。
確かナミを庇って結構な怪我をしたんだっけ。
漠然と死ぬんだと思っていた。

そうか、私死んだのか。

じゃあここは噂に聞くあの世ってやつか。
なんて殺風景で寂しい場所なんだろう。
立っているのか寝ているのかさえ分からないではないか。

意識だけのような状態でぼうっとしていたら、
ふいにぼんやりと自分の周りが光りを点したように明るくなった。

弱々しいそれは自分の体を照らすのに精一杯で相変わらず周囲は真っ暗だった。
でもこれで自分は今立っているということが分かった。ちゃんと地に足をつけて立っている。

とりあえず歩いてみようと一歩踏み出せば、足がずしりと重いことに気がついた。
足元を見遣れば黒く鈍い光りを纏った枷がはまっていた。
両足をがっしりと固定したそれには長い鎖が伸びており、先には丸い鉄球がついていた。

いつの間にこんなものが…。

重いけど歩けないことはない。
ずず、と足枷を引きずりながら歩を進めた。
するとまたぱっと目の前に明かりがつき、ぼんやりと何かが浮かんできた。
映像を映し出す電伝虫のように、スクリーンが広がり一つの光景が映し出された。



「お父さん、お母さん……?」


それは幼い頃の私と両親の姿だった。
楽しそうに両親と手を繋いで歩いている。

ぱっと場面が切り替わった。
今度はお母さんに怒られて泣いている。
そうだ、あれは確かお母さんのお気に入りのカップを割ってしまったんだっけ。
怒られ泣く私をお父さんが慰めている。

また場面が切り替わる。
そうして次々と私の過去が暗闇の空間に映し出されていく。

そして次に映った光景に息をのむ。

それは運命のあの日。
村が紛争に巻き込まれ、全てを失った時。

人々の喧騒と銃声や金属音が入り混じる中、私は一人震えていた。
お母さんが私を家の地下にある隠し倉庫へ押し込めた。
ドンドンドン!と家の扉が叩かれている。
それをお父さんが必死に押さえ付けていた。


「ええか、。辺りが静かになるまで出てきたらあかんよ!」

「い、嫌や!お母さん達も一緒に隠れよう!」

「…ごめんな。」




ドンドンドン!

扉が更に強く叩かれた。ぎしぎしと蝶番が軋む音がする。

恐い、すごく恐い。

そんな私の気持ちを察してかとびきり優しい手つきでお母さんが頭をふわりと撫でた。
石鹸のいい香りが鼻を掠めた。


「これからどんなに辛いことがあってもくじけたらあかんで。
 いつか絶対幸せな時がやってくるから。笑っていっぱい福を呼び込むんや。
 大切な、愛しい私たちの子。―負けたらあかんよ、ええか、。約束やで……!」

「お母さん!お父さん!」


叫んだと同時に倉庫の扉が閉められた。


そこでまた場面が切り替わる。
今度はあちこちで火が上がり家屋もめちゃくちゃになった村の様子だった。

壊され荒らされた家の中、私はただ呆然と立ち尽くしていた。
傍らには賊に殺され動かなくなった両親。
血の匂い、色んなものが焼ける匂い、倒れている人。地獄のような光景。

絶望に苛まれている時、私に伸ばされた手は更なる地獄への案内だった。





次に映ったのは研究所で過ごした日々だった。
村から連れ出され、訳も分からないまま実験体になった。

酷い痛みに被験者同士の殺し合い。
おかしくなりそうな状況の中、私は一人の男の子に会った。その子の名前はムツ。
まだ幼い彼もまた私と同じ被験者だった。
私はその頃既に妙な細胞を組み込まれ、人とは一線を引いた存在になっていた。
ムツもまた私と同じその苦しみを味わった。

話し親しくなる内に私はか弱い彼を守らなくてはいけないと思った。
弟ができるとはこういうことか、とあんな場所でも漠然と感じていたのを覚えてる。

だから失敗作としてムツを私自身の手で殺さなくてはいけない時、私はようやく逃げる決心をしたのだ。
恐かった、またドクターにあの痛みや苦しみを植え付けられるかと思うと恐くて仕方なかった。
でも人を止める―心まで腐らせたくはなかったんだ。
ムツの手を引き、命からがら逃げ出した。

そこでぷつりと映像が途切れた。

同時にがしゃんと重い音が耳につく。
下を見れば右足の枷が真っ二つになり外れていた。
何で…、と考えて気付いた。
この足枷は私の自由の象徴ではないのかと。
研究所に連れていかれたあの時から私の自由は奪われた。
だから研究所から逃げたことで一つ解放されたんだ。
でも、完全に逃げ切れた訳じゃないから片方はついたまま。
現に私はドクターに再び捕まり、洗脳を受け、仲間を傷つけてしまった。

この枷はもう一生外れないのか。
ああ、そうだ。そもそも私は死んだんだっけ。


……お母さんお父さん。私約束守れなかった。
でも大事な仲間が、死んでも守りたいって思う仲間ができたんだ。だから……。


ぽうっと前方が明るくなる。驚いて前を見ると、お母さんとお父さんが立っていた。




「……う、そ…お母さん、お父さん…?」




二人は私を見てやわらかく微笑んでいる。
ふらふらと足が自然とそちらへ進んだ。
でも一向に二人の傍へ行けない。むしろ遠ざかっている。



「待って、ねえ、待って……!」



最初は歩いていたけど、今は目一杯走っている。
なのに全然追いつかない。追いつけない。



「行かないで!追いてかんといてよ…!!」



今になって左足についた足枷がずしりと重い。
まるでドクターがまだ私を追い詰めているようだ。


「あっ!」


ずざっ、と派手に前のめりに転んでしまった。
慌てて顔を上げた時にはもうお父さんもお母さんも随分遠くへと離れていた。



「お母さん!お父さん!」



声の限り叫び、手を伸ばしたけど届かない。追いつけない。
次第に二人の姿は消え失せてしまった。
へたりこんだまま動けなくなる。

どうして。

私はお母さんとお父さんの元へは行けないの?


地につけた手の平にぽたりと水滴が落ちる。
頬に触れれば涙がぼたりぼたりと溢れていた。


暗闇に一人ぼっち。


死しても両親には会えない。


急激に不安と恐怖が込み上げてきた。




「いや、や……皆おいてかんといてや。一人は寂しい……。」




ぽたり。


また一滴涙が闇に落ちた時。





「……!」



「…え?」





誰かの名前を呼ぶ声が聞こえた。




!」




次々にあちこちから聞こえる声。この声は……。




「皆の声…?」




名前を呼ばれる度に左足の枷がびりびりと震え、次第にヒビが入ってきた。
その声に答えるように私も大きく叫んだ。







「ルフィ!ゾロ!ナミ!ウソップ!サンジ!チョッパー!ロビン!フランキー!」






私はまだ皆といっしょにいたい!







ぶわっと闇を払うかのように光があふれ辺りを包み込む。
その中で一際強く輝くの光の玉があった。
咄嗟に手を伸ばす。それを掴んだ瞬間皆とは別の声が響いた。





、あなたはまだこっちに来たらあかんよ。」


「そうだ、。お前はまだ生きるんだ。」





振り向けばお母さんとお父さんがいた。



ばりん。



音を立てて足枷が砕け散る。






「お母さん!お父さん!」







手を伸ばして叫んだ瞬間、私の意識は反転した。
















*****














「お母さん!お父さん!」




叫んでがばっと勢いよく身を起こせば、お腹に激痛が走った。
うずくまって人知れず悶絶してふと気付いた。ここ何処だろう。

木のベットに横たわっていたようで、近くのテーブルには様々な薬や医療機具が置いてある。
一瞬研究所での光景が過ぎり、どきりとしたがよくよく見ればチョッパーが使ってたものと分かり安心した。

きょろきょろと部屋を見渡したが全く知らない所だ。
シンプルな家具に窓際には滑らかになびくカーテン。
どことなく落ち着いていて、やわらかい雰囲気に少しずつ気分も落ち着いていてきた。

ぐっと手を握りまた開く。
それを繰り返し自分の手の平を見つめた。




「生きてる……。」



伝わる感触が自分がまだこの世に生きているという証拠だった。


とりあえず外の様子や誰かいないか見ようと、今度は痛まないようにゆっくり身体を起こしてベットを抜け出した。
それでもずきずきとした痛みはある。お腹刺されたんだから当たり前か。
本当によく生きていたもんだ。


かちゃりと扉を開けて部屋から出れば、どうやらここは2階の一部屋ようだ。
階段を静かに降りると沢山のテーブルと椅子が並んだ場所に出てきた。
カウンターもあり、お酒が所狭しと並んでいるのを見てここは酒場だということが分かった。
何で酒場にいるんだろうと疑問に思いつつ、テーブルの合間を抜け外に出た。
まだ朝が早いのか誰も人が見当たらない。
正確な時間が分からないけど、大体は経験と肌に触る風で分かる。

店や家が並ぶ道を歩く。
久しぶりに歩くからか足元が覚束ない。

少し歩けば町を抜けた。
あまり大きな町じゃないようだ。

真ん中に畦道があり両側には木々が生い茂っていた。
その道を転ばないように歩いていく。

しばらく歩けば海岸へと開き出た。
砂浜に足をつける。さくさくとした感触がひどく懐かしい。
そのまま水際まで近寄ってみた。
海水がざぶんと両足を飲み込み冷たさが染み渡る。

よく見れば身体中包帯だらけだ。
チョッパーが手当てしてくれたんだと思うと、感謝とそして申し訳なさで胸がぎゅっと苦しくなった。

海のずっと向こう側、水平線をじっと眺めていたらゆっくりと朝日が昇ってきた。
丸い大きな太陽が海の中から出てくるように昇ってくる。
オレンジ色の淡いきれいな光。一日の始まりを告げる光。
ありふれたいつも見てた光景なのに今日は特別胸をうつ。
当たり前のように訪れていた日々がもう二度と送れないと思った。
先程見ていた夢のように暗闇に一人ぼっちのままだと思うとぞっとした。

僅かに震えた拳をぎゅうと押さえ付けていたら、後ろからバサッと何か落としたような音がした。
驚いて振り返るとチョッパーが持っていたであろうカゴを落として口を開けて立っている。
その隣には同じような顔をしたウソップとルフィも。
そのあまりにもまぬけな顔に思わず吹き出しながら、右手を上げる。



「よ!」



へらりと笑えば三人が一斉に飛びついてきた。
体重を三人も支えきれるわけもなく、そのまま砂浜へ倒れ込んだ。
ぐえ、とカエルが潰れたような声が出た。



!お前やっと起きたんだな!」

「おれぁ、なかなか起きねぇもんだからもう駄目かと思ったんだぞ!」

〜!おで、すげえ心配したんだぞ!」

「三人いっぺんに話してもわからんて!つか重い!痛い!」


涙ぐみながらわいわい話してくるが、鼻声だし重いし聞き取り辛い。
抗議すれば、そうだは怪我人だぞ!とチョッパーが慌てて二人をどけた。いや君も乗っかってたけどね。

ぺたんとそのまま四人座ったまま状況を報告してもらった。
あの後ルフィがドクターをぶっ飛ばして、研究所は倒壊。
皆はそこをなんとか脱出してきたらしい。


はそれから4日間も寝てたんだぞ。」

「4日間も!?…どうりでお腹がぐるぐる唸ってるわけだ。」

「おめーはルフィかよ。」


ウソップにぺしりと裏拳でつっこまれた。
ふとウソップの方を見て重大なことを思い出す。


「ウソップ、怪我は……。」

「ん?ああ、これくらい何ともねぇよ!
 おれは何たって海の強い戦士だからな!」

「でも、ごめん……ごめんなさい…。」


強く返してくれて安堵したけど、自分が傷つけたことに変わりはない。
いくらドクターに操られてたとはいえ、私のせいで痛い思いをしたんだ。
俯いて黙っていたらルフィがあー!もう!と急に叫んだのでびっくりした。


「確かにおれ達は怪我をした!でももたくさん苦しい思いをしただろ!
 それにおれ達ももみんな無事だった!ならそれでいいじゃねぇか!」

「ルフィ…。」

「ルフィの言う通りだ。
 はあんな状態になっても最後までおれ達の事を考えてくれていた。」

「みんなを助けたくてやったことなんだ。謝らないでくれよ!」

「ウソップ、チョッパー…。」



皆の言葉にあたたかい、心地好い気持ちで胸がいっぱいになった。
私は皆にたくさん迷惑をかけたけど、それでも私のことを思って助けてくれた。
溢れそうになる涙を袖で拭って、口を開こうとすればルフィが立ち上がり私の腕を引いた。



「みんなの所へ行くぞ!」

「……うん!」

のことみんなすっげー心配してたんだぞ。」

「ああ、きっと見たら驚くだろうなー。」


嬉しそうに三人が笑いながらさくさくと砂浜を歩く。
私はルフィにおぶわれて、その背中に身を預け同じように笑う。


少し歩けば大きな岩の裏手にサニー号が停泊されていた。
久方ぶりに見る立派な鬣の船首を見て嬉しくなる。
丁度船の柵から顔を出していたナミが私達を見つけたのか、声を上げた。


「何、あんた達忘れ物でもした…の…」


最後の方は声が薄くなって尻すぼみになっていく。
驚き目を見開くナミに私はルフィの背中から顔を出し笑顔で手を振った。


…!!」


慌てて踵を返したナミが皆に伝えたのか、全員がサニー号から顔を出した。
その表情はみな一様に驚きに満ちていて、また吹き出してしまった。

ルフィの背中から降ろしてもらい、砂浜に両足を着けると同時にばふっとナミに抱きつかれた。
周りには皆がいつの間にか立っていた。


あんたって子は本当にバカなんだから…!」

「ええ!ナミさん会っていきなりそれですか。」

「…ほんと、バカなんだから…。あんな無茶して!大怪我して!」

「ナミ…。」

「……無事でよかった、生きてて本当によかった……!」


ぽろぽろとその大きな瞳からは涙がこぼれていた。
やわらかく気遣うように抱きしめられ、それに答えるように私もナミにぎゅうと縋り付く。


「ごめん…。心配かけてごめんな。
 ほんまに、ほんまにみんなありがとう……!」


いつしか私もわあわあ声を上げて泣いていた。
やっと本当の意味で手に入れた自由に。
自分をこんなにも思ってくれる仲間に。
ロビンがハンカチで涙と鼻水を優しく拭いてくれた。
わしゃわしゃとサンジが頭を撫でてくれる。
フランキーとチョッパーはおいおい泣いていた。
ゾロはまったく世話の焼ける、とぽんぽん頭をたたいてきた。
ウソップは涙ぐみながら頷き、ルフィはにしし、と笑っていた。


!」


唐突に名前を呼ばれ、顔を上げた。
ルフィがいつもの眩しい太陽みたいな笑顔で言う。


「おかえり!」


その言葉に一瞬目を丸くしてから、私も負けないくらいの笑顔で返した。



「ただいま!!」












******















「本当にもう行っちゃうんですか?」







ムツが寂しそうな声色で私に尋ねた。

あの後、私は寝ていた酒場がムツの暮らしている所だと聞き3年ぶりに再会したのであった。

ムツは私の事をずっと心配していた、無事でよかったと涙を流しながら喜んでくれた。
私も彼の事はあの別れから気にかけていた。お互いの無事を確認し合い嬉しく思った。
ムツの事を拾ってくれ一緒に住まわせてくれているリトさんとも会った。
リトさんはムツの事を本当の家族のように思ってくれていて、私はとても安心することができた。
この人の所ならムツは幸せに暮らせるだろう。

今はログも溜まったということで、出航準備をしている所だ。
私の怪我も元々があの細胞のおかげで回復も早かったので、だいぶ動けるようにはなっていた。
皮肉にもドクターが与えた力が私の命を結果的に守ってくれた形になった。



「うん。ムツにも色々お世話になったね。ありがとう。」

「いえ、そんな。僕はさんのお役に少しでも立てて嬉しいです。」


にこりとムツが笑う。
研究所にいた頃よりもずっとずっと晴れやかで澄んだ笑顔。


「ねえ、ムツ。私達は出会いこそ最悪な状況やったけど
 今はこうして自由に動けて、心から笑うことができる。
 お母さんが言ってたこと、間違ってなかったんや。
 辛いこと苦しいことがあっても、いつしか幸せはおとずれるんやって。」

「…はい。」

「私はこの時を、この海賊団の仲間になれたことを本当に幸せに思うよ。」

「僕もとても幸せです。さんとこうしてまた出会えたことも。」


サニー号の近くでルフィとウソップがふざけていて、ナミがそれを叱りつけていた。
二人で顔を見合わせて笑った。










「よーし!出航だーっ!!」



ルフィが元気よく大声で叫ぶ。
ばんっと勢いよく帆が張られ、錨が上げられた。


「みなさん!どうかお元気で!」

「おー!ムツも元気でなー!」

「飯うまかったぞー!」

「またいつか会いに行くなー!」


ぶんぶんといつまでもムツとリトさんは手を振っていた。
私も彼らが小さく見えなくなるまで、手を振った。

やがて岸を離れ船は沖へと出てきた。

辺りをぐるっと見渡して、思わず笑みがこぼれた。
うへへ、と笑っていたら横にいたウソップが怪訝そうな顔をした。


「何笑ってんだ?」

「ううん。別に。ただ嬉しいだけやで。」

「嬉しい?」

「皆とまた一緒に航海できることが嬉しいの。」


そう私が言えば皆が穏やかに笑うのが分かった。
ルフィが私の手を取ると、きらきらとした笑顔をこちらに向けた。


「ああ!おれもといれてすげえ嬉しいぞ!」







ざあっと海風が私達の間を通り抜ける。
ふいに両親の声が聞こえた気がした。



ねえ、お父さん、お母さん。
そっちに行くのはもうちょっと待ってて。
この仲間達とまだ旅をしていきたいんだ。
だから見守っててね。





私は今、本当の幸福を見つけた気がするよ。















ハロー、アクアプラネット

(みんな、ありがとう)













ようやく終わりとはじまりの2部、完結しました。
長かったですがここまでお付き合い下さりありがとうございました。

12.2.11