気がつけば知らない場所にいた。
食料が尽きかけてやっとの事で新しい島に上陸できて、
さあ町に繰り出そうか!と意気込んだ瞬間急な目眩に襲われた。
咄嗟にしゃがみ込んで目を閉じ波が治まるのを待つ。
ぐわんぐわんと揺れて気持ち悪い。
さすがに今回はやばかったしそのせいだろうと、
ようやく症状が治まり立ち上がった瞬間、強烈な違和感が私を包んだ。
整然と立ち並ぶ町並み、人とは思えない動物の頭に人の体を持った生き物。
空には船が飛び交い、中央には大きな塔みたいな建物が建っていた。
ざわざわと騒がしく人々が行き交う中、私の周りだけが静かな世界に取り残されたかのようだった。
ここは、どこだ?
さっきまで砂浜にいたと思ったら全く見覚えのない場所にいた。
目眩がしたと思えば瞬間移動していた?そんな馬鹿な。
とにかくここでじっとしていても始まらないな。
お尻についていた砂をぱたぱたと掃って歩きだした。
*****
とりあえずうろうろ歩いてみたり、その辺の人に聞き込みをしてわかった事がある。
それは私がいた世界とどうやら違う世界、というやつらしい。
だって聞く人みんな4つの海のことやグランドラインのことを知らなかったし、
ここは江戸の歌舞伎町(こういう字らしい)という場所で、天人(あまんと)と呼ばれる
宇宙人みたいなのが闊歩しているなんてもう私がいた所とはてんで違うと確信するには容易かった。
近くのあった公園に入りベンチに座って、小さな子供達がきゃっきゃっと無邪気に走り回るのを眺めながら考える。
あの世界からこちらに来たからとて何か不都合があるだろうか。いや、きっとない。
いつ研究所の奴らに見つかるかとびくびくすることもないし、家族はみんな死んでしまい友人や仲間なんてやつもいない。
よくよく整理してみればつまりなんら支障なんてなかったのである。
ただ一つだけ問題があるのは衣食住をこれからどうしようかそれだけが困ったところである。
見たところ通貨も違うようだし。(円、という単価であった)
前みたいに適当な海賊からくすねるにもいなさそうだし、大体ここの法とかどうなってんのか知らないし。
まあ盗みとか殺しとかはどこの世界でも駄目なことだろう。
じゃあ真っ当に働く…とか。
でもこんなガキ雇ってくれる所なんてあるかな。しかも身元不明。
……もしかして詰んだ?
いやいや人間やればできる。なりふりかまわずいけば生きていけるんだから。
そう無理矢理言い聞かせつつも、自然と口からは重苦しいため息がこぼれた。
「どうしたんだいアンタ。そんなため息ついて。」
隣から突然発せられた声に思わずびくつきながら振り返る。
いつの間にいたのか隣に煙草を片手に持ったおばあさんが座っていた。
誰か来ていたのにも気がつかない程考えていたのかとまたため息をつきたくなる。
「どうしてですか?」
「こんな真昼間から子供がそんな顔してるなんてただ事じゃなさそうだろう。」
ふうっと煙草の煙りを吐き出しながらおばあさんは言った。
そんな顔とはどんな顔だろうかと無意識に頬を触っていた。
「これからどうしようかなって悩んどったんです。」
「へえ、家出かい?」
「家出だったらよかったんですけど。帰る家はとうになくなってしもうたんです。」
「……どういうことだい。」
ちらりと横目に隣を窺うと話してみろと暗に表情が物語っていたので
どう話せばいいものかと頭を整理させつつぽつりぽつりと言葉をこぼしていく。
親を亡くし悪い奴らに捕まって研究所の被験者になっていたこと、
命からがら逃げ出してあてもなく放浪していた末に此処にたどり着いたことをだいぶかい摘まんではいたがおばあさんに説明した。
そして私が違う世界から此処に来たことや体を自在に刃物に変化させれることを言えば驚いていたが途中で口を挟まず話を聞いてくれた。
「ごめんなさい。急にしかも初対面の人にこんな話を……。」
「構わないさ。私が話すよう促したからね。」
そこから暫し沈黙が訪れ、おばあさんは煙草をゆっくり吐き出してからおもむろに立ち上がった。
ぼんやりとその一連の動作を眺めていたら、私の顔をまっすぐ見つめて踵を返した。
「着いてきな。」
「え?」
「行くとこないんだろう?だから私の所へ来ればいい。」
「そんなよく知りもしないのに…!」
「私が放っておけないだけさ。世話焼きなのは性分でね。
居場所を無くした奴を見過ごせないのさ。アンタみたいな奴はね。」
体をこちらに向けてそう笑っていうおばあさんに私は信じられない気持ちと縋り付きたい気持ちがまぜこぜになる。
そこでふっと今までの自分の辿ってきた道のりを思い出す。
決して楽な道じゃなかった。
会う者はほとんどが汚い人間だった。
私利私欲に塗れ、自分を勝手に化け物に仕立て上げ、作品と称して殺しをさせた研究所の人間。
時折上陸した町の人達は親切で優しい人もいたがそれ以上にそいつらの私に与えていた影響は大きかった。
だから人と接する時はいつも慎重であった。
この人は自分にとって害があるかどうか。
元々人見知りなどはしなかったから人当たりを良くして悟られないように細心の注意をはらいながら為人を測っていた。
果たしてこの人は信用しても良いのだろうか。
自分自身に問い掛ける。
信用したい、という思いが圧倒的に強くて無条件にも飛びつきたくなっている自分にここまできているのかとおかしくなった。
「……本当にいいんですか。」
「ああ。」
「きっと迷惑かけると思います。ガキやし、こんな…身体やし。」
刃に変えた自分の腕を見つめる。
生きるために何でもしてみせると誓った。だから奪うこともたくさんしてきた。
それでも、こんな化物でも拾ってくれるというのか。
そうぽつり呟いた。
「なら、世界が違うだろうが何だろうが生き抜いてみせな。
どんな身体だって化物だって関係ないさ。私にはただのガキにしか見えないよ。」
そっと頭に乗せられた手に顔を上げればおばあさんはゆるりと口元を緩めていた。
胸の奥がぐうっと締め付けられるような、苦しいけど嬉しい、不思議な気分だった。
「……よろしくお願いします。」
頭を下げ、震えそうになる声を必死に立て直して感謝を述べる。
「アンタ名前は?」
「です。」
「そう、いい名前だ。私はお登勢。よろしく、。」
差し出された手を掴むと意外と力強くて、そして暖かかった。
それが私がこの世界で生きることになった始まりであった。
あたらしい道。
もしも銀魂の世界に来てしまったら編。
言葉とか文字とかは心意気ということで勘弁してください。
14.7.14