「……あれ、おかしいなー。」
ぽこぽこと絶え間無くシャボン玉が浮かび上がる。
ここはその名もシャボンディ諸島。(そのまんまな名前である)
次の目的地である魚人島に行くためには船をシャボンでコーティングしないといけないらしく、
私達は腕のいい職人さんにそれをやってもらう為に滞在することになったのだ。
つい先程までルフィやチョッパー達と一緒にシャボンディ諸島を観光していたのだが、
ちょっと離れてお店を覗いている内にはぐれてしまった。
迷子になるとか某緑頭の剣士じゃないんだし。不覚だ。
とりあえず船が停泊している場所は分かってるし、
運がよけりゃ歩いてる間に会えるだろうと高を括って観光を続行することにした。
ぷらぷらと当てもなく歩いていく。
珍しい物がたくさんあってついきょろきょろと辺りを見回してしまう。
目が忙しくて困る。大体ここ広すぎだしな。
そうして見ていたらある一点に釘付けになった。
大きな白熊がオレンジ色のツナギを着て、二足歩行で歩いている。
でかい…、しかもごっつ可愛い。ふかふかそうだ。
―何あれすごくもふりたい…!
そう思った私の行動は素早かった。
その熊に狙いを定めて勢いよく背後から抱き着いた。
「会いたかったよくまおー!!」
「ひゃああ!な、何!ていうかくまおって誰!?」
背中に飛びついて首の辺りに顔を埋めてぐりぐりすれば、くまお(仮)はわたわた慌てだした。
予想通りなんというふかふか具合!
「んー、めっちゃふかふかやなぁ。たまらんわー。」
「うわわ、いきなり何するの!君だれ!」
「どうしたベポ。」
「あ!キャプテン!」
くまおの背中にひっついたままもふっていたら、
向こう側からこれまたふかふかそうな帽子を被った目の下にめっちゃ隈がある男の人が近づいてきた。
「わからないけど急にこの子が飛びついてきて……。」
「…ん?お前そのツラ……麦わら屋の仲間か。」
「麦わら屋…?ああ!ルフィのことか。」
「確か名前はだったな。」
「おおう、よくご存知で。」
「手配書で見たからな。そんなナリでなかなかよくやるじゃねぇか。」
「え、いやあ、それほどでも〜。」
何か知らないが褒められたので少し照れてしまった。
キャプテンと呼ばれてた所を見るとこの人もしや海賊か。ということはくまおも?
「お兄さんは海賊なん?」
「ああ。」
「くまおも海賊?」
「そうだよ…ってだからおれの名前くまおじゃない!ベポだ!」
ぷんすか怒るくまおもといベポもやはり海賊だったようだ。
よろしくねー、とにこにこ挨拶すれば何故かベポはひどく疲れた様子だった。
「ところでお前ベポの背中に引っ付いて何してやがる。」
「や、あまりにもふかふかでかわいらしかったのでつい衝動的にもふりたくなって……。」
「何その衝動怖いよ。」
「ああ、まあ分からなくはないがな。」
「キャプテンまで何言ってんの!」
キャプテンさんも私の気持ちが分かるらしい。
さては同じかわいいいもの好きだな。
「分かるがずっと引っ付かれてると困るんでな。」
「うわっ、何すんねん!」
バリッとベポの背中から引きはがされてしまった。
そのまますとんと地面に降ろされてしまい、不満げな表情でキャプテンさんを睨みつける。
「何だ、その不満そうな顔は。」
「不満も不満、まことに遺憾であるよ。」
「へえ。難しい言葉知ってるな。えらいえらい。」
「なっ…!馬鹿にされとる…!」
ぐしゃぐしゃと頭を撫でられますます機嫌が急降下していった。
この男、完全に私のことをナメている。
なんか反撃しようと口を開いた所でキャプテン野郎が爆弾を落としてきた。
「ならウチに来るか?」
「「……は?」」
思わずベポとハモってしまった。
この人いきなり何言い出してるの。馬鹿なの?頭おかしいの?
「お前今おれのこと頭おかしいとか思っただろ。」
「思いました。」
「ずいぶん素直だなおい。
だから、ベポのことがそんなに気に入ったんならウチに来ればいいと言ったんだよ。」
「えー、そんな極端な。
大体知らん人にはついて行ったらあかんってナミに言われてるもん。」
「…そうか。なら、おれはトラファルガー・ローだ。ハートの海賊団の船長をしている。」
「あ、これはご丁寧にどうも。私はです。麦わらの一味に所属してます。」
「ああ、よろしくな。」
「よろしく。」
ぎゅっと握手をして挨拶を交わした。
「さて、じゃあ行くか。」
「うわ!」
がばりと片腕で抱え上げられ、体が宙を浮いた。
いきなりのことに頭が混乱しそうだ。
「ちょっと何すんの!」
「何っておれ達はもう知らない人じゃないだろ?
だったら連れてくなりなんなりオッケーなはずだ。」
「そういう意味じゃないやろ!
つか同意なかったら一緒やから!お前馬鹿か!アホか!」
「こら、キャプテンにそんな口をきくんじゃない。」
「もう仲間入りしてる!?」
ていうかさっきからなんかこの人キモいんですけど。
もういろいろと組み合わせてヤバい。
私が密かにドン引きしてる間にもローは私を抱えてスタスタ歩いていく。
え、何これマジで連れ去られてんの?
「ちょっと待て、私仲間なる言うてないから!降ろせ!」
「誰もお前の意見なんか聞いていない。」
「独裁者か!何様のつもりや!」
「おれ様。」
「何ドヤ顔で言ってるの腹立つ…!
いやー!離せー!降ろせー!変態ー!」
「人聞きの悪いこと言うな。バラすぞ。」
「ぎゃあ!刀ちらつかせんなや危ない!この犯罪者!誘拐犯!」
「おれは元々海賊という名の犯罪者だ。」
「…ソウデシタネ。」
なんだこいつのああ言えばこう言うの不毛なやりとりは。
おまけにひょろい見た目と違って意外と強さ気な雰囲気漂ってるし、
下手に暴れたらマジであの無駄に長い刀でバラされかねない。…ここは隙を窺って逃げだそう。
つかどうしてそんなに私を自分の仲間に入れたがるんだ。
小脇に抱えられながら首を伸ばしてローの顔を見る。
「なあ、なんで私を仲間にしたいん?」
「簡単な話だ。そろそろウチの海賊団にもお子様ポジションが必要だと思ってな。」
「何そのくだらない理由!」
「冗談だ。」
「冗談に聞こえねーよ。」
フッと不気味な笑みを浮かべるローからさっと視線を外し、
隣をぽてぽて歩いているベポを見た。ああ、癒される。
「うっ…ベポ〜。あんたのキャプテンちょっと頭ヤバいよー。色んな意味で恐いわー。」
「諦めなよ。キャプテンは興味を持ったものに対してはすごいしつこいから。」
「えええ。」
何をどう諦めろというのか。
に合うサイズのツナギ作ってもらわねぇとな、
とかぬかしてるローを無視して横にあるベポの手を触って癒されていた。
結構肉球固いんだな。
ぽつぽつ会話をしていたら急にローが立ち止まった。
何だろうと顔を上げたら、黒いふさふさのコートを着た
真っ赤なチューリップみたいな髪の男の人がローにガンを飛ばしていた。
わあ、恐い顔だ。
ローの方を見ると彼もチューリップ頭にガンを飛ばしていた。
もしや知り合いだろうか。
「なんだトラファルガー、お前ガキなんか抱えて何してやがる。隠し子か?」
「ユースタス屋と一緒にするな。」
「どういう意味だコラ。」
「そのままの意味だが。」
恐い顔を更に凶悪にして睨み合う二人を交互に見る。これはまずい。
喧嘩されたら巻き込まれるではないか。
なんとか気を逸らそうと恐る恐る口をはさむ。
「ロー、この人知り合い?」
「誰がこんな凶悪面のチューリップと知り合いなものか。」
「んだと、テメェ殺すぞ!」
「あぁ?やるか?」
えええ。また振り出しに戻ったよダメだこの大人達。
二言目には喧嘩ってどんだけだよ。
見兼ねたのかチューリップの人をマスク被った人が抑え、ローはベポに抑えられた。
「ところでなんなんだそのガキは。」
「おれ達の新しいクルーだ。」
「断じて違う。誘拐されたんです。」
「お前…こんなガキを誘拐するとは。このロリコン野郎が。」
「語弊がある言い方をするな。
おれはただこいつが気に入っただけだおもしろ頭が。」
「テメェよっぽど死にたいようだな……!」
ぱっと解放されて地面に下ろされた。
ベポがすかさずこっちにやって来て、「危ないからここにおいで」と手を引いてくれ、離れた場所へやってきた。
いつの間にか同じく二人の喧嘩から避難してきた仮面のお兄さんが隣に立っていた。
「あの二人めんどくさいな。」
「ほんとにね。」
「違いない。」
「ところでもう私帰ってもいいかな。」
「いいんじゃないかな。ごめんねキャプテンが迷惑かけて。」
「いいよ、ベポたくさんもふれたし。じゃあまた新世界でねー。」
「バイバイー。」
手を振って二人と別れて背を向け走り出す。
後ろの方でボカーンとかドカーンとか嫌な音がしてるが気にしない。
とりあえずルフィと合流するのは諦めて、サニー号が停まってる場所へ戻ってきた。
よじ登って甲板に降り立つと船に残っていた三人が揃って私を目に留めた。
「なんだ、一人か?」
「早い帰りだな。ルフィ達はどうした?」
不思議そうにサンジとウソップが尋ねる。
仲間の姿を見てなんだか一気に安心した。
ばっと勢いよくサンジに飛びつけば、優しく受け止められた。
「おー、どうした。なんかあったか?」
「シャボンディ諸島…こわい。恐ろしい子…!」
「げ、ここそんな危ねぇ所なのか!?
聞いてくれみんな島に降りたらいけない病が…。」
「落ち着けよてめぇら。」
散々な目に遭った一日だった。
新世界突入前から不安にさせる出来事でした。
シャボンディ諸島誘拐未遂事件。
opシリーズ番外編。シャボンディ諸島編。
この後例のオークション会場で再会して一悶着あるという感じで・・・。
12.4.15