「お頭めっちゃ荒れとんなぁ。」

「そうだな。」



船を着けた傍に佇む仮面を着けた男とその横でもっさもっさとポップコーンを食べている少女。
二人の視線はキッド海賊団の船長ユースタス・キャプテン・キッドに注がれていた。
暴れるいかつい男を眺める仮面とのんきにポップコーンを貪る子供。
傍から見たらとてもシュールな光景である。

日が暮れる目前にとある島に上陸したのだが、島の住民からログが溜まるのに一ヶ月かかると聞いたのだ。
それを聞くやいなやキッドは「長ェ!!」と一言叫ぶと当たり散らすようにそこら辺の物を壊し回ったのだった。
島の者達からすれば迷惑極まりない事なのだが、
よく海賊等の溜まり場となっているらしく慣れているのか特に気に留めるものはいなかった。


「この島は何にも悪くないねんけどなー。」

「違いないが、キッドだから仕方ない。」

「まあそうやんな。」


もくもくとポップコーンを食べ進める少女は隣に立つ仮面キラーにいるかと尋ねた。
無言で頷いたキラーに袋を差し出せば数個つまみ仮面を口元だけ開くようにずらすと放り込んだ。
何度見ても面白い食べ方だとは思っている。


「もし今一ヶ月時間を進められる時計があったらお頭いくら出すやろうな。」

「いや、金は出さずに奪うだろう。おれ達は海賊だからな。」

「そりゃそうやな。」


二人はそんなことをひたすらポップコーンを食べながら話していたが、しばらくしてキッドが一通り気が済んだのか戻ってきた。


「お頭、短気は損気やで〜。」

「うっせぇ。」


開口一番がこめかみをトントンと叩きながらそう言えばキッドはイラッとした表情での頬を引っ張った。


「いひゃい!ほかひら!ふぁなひて!」

「あー何て言ってるかわかんねぇな。」


ぎゃいぎゃい騒ぎ始めた二人をキラーは仕方なしに諌めた。
恨めしそうに頬を擦りながらキッドを睨むの頭を撫でてやる。


「で、キッドどうするんだ。」

「どうするも何も待つしかねぇだろ。」


舌打ち混じりに苦々しい表情のキッドにそれもそうだとキラーは頷いた。
三人は一度船に戻ると現状待つしかないのでクルー全員に各々自由に行動しろとキッドは告げると解散させた。
船番は交代ですることになり、まだ当番ではないも島の散策に出かけることにした。










*****










この島に上陸した時からは気づいていたのだが、ここはやたら海賊が多い。
後に島民から聞いた話も合わせても多く感じていた。
港にずらりと並んでいたのはほとんどが海賊船であった。
ひとえにこの島のログの長さが海賊が溜まる理由でもあるのだろう。

港を抜け、浜を歩き、町をふらふらとは歩いていく。
ざっと見ただけではあるがあまり治安は良くなさそうだ。
海賊をたくさん相手にするからか町の人もどこか普通の雰囲気ではないと感じていた。

は自身の経験上こういった物騒な輩には子どもという事もあって何かと絡まれやすい。
今もちらほらと視線がこちらに注がれているのを感じて、尚且つそれがあまり良くない類いのもので思わずはため息をこぼした。
普通の町ならあまり子どもが一人でうろついていても目立ちはしないのだが、こういった柄の悪い町では大変目立ってしまう。
大抵は親とか大人達と連れ立っているからだ。

とはいえは絡まれたら面倒だから嫌だな位にしか考えていないので、視線を無視して黙々と散歩を続けている。
1ヶ月という長い滞在期間。何も起こらなければいい。
そうは思うが自身の乗る船のクルーを思い浮かべて、無理だろうなと本日二度目のため息を吐き出したのであった。










*****










適当に見回っていたらいつの間にか日が落ちていた。
初日はまだしもこれから約1ヶ月この島にいるのかと思うと気落ちする。
新しい島で冒険するのは楽しいが、同じ所にずっといるというのはつまらない。
早くも船出したくなっているはお頭のこと言えないなと苦笑した。

あちこちを歩き回っていたせいかお腹が空いてきていた。
どこで食事をしようと思案していると背後から声をかけられた。
聞き慣れたその声に振り向くとキラーが近づいてきた。


「キラーやん。なんか面白いことあった?」

「面白いことはなかったな。今から酒場に行くがも一緒に来るか?」

「うん。行くー」


二人で連れ立って他愛ない会話をしながら歩いていると、目当ての酒場に着いた。
古びた酒樽の形をした看板が風に吹かれてゆらゆらと揺れている。
両開きの扉を開けて中に入れば既にたくさんの客で賑わっていた。
そのほとんどが海賊で人相の悪い顔がいっぱい並んでいる。
空いていたテーブルに座って料理と酒を適当に注文すると(はもちろん飲めないのでジュースである)また話をしていた。
暫くして料理が届くとは嬉々としてそれらに手を付け始めた。
キラーもまたつまみながら酒を飲んでいたら、ざわざわとした中に一際でかい喧騒が二人の耳に入った。
まさかと声のする方へ首を傾けるとやはりキッドと見知らぬ海賊が争っていた。


「キラー…」

はここで食べていろ」


ため息を吐き出してキッドの元へ向かう背中を哀れみを込めた目線では見送った。
ごちゃごちゃとした喧騒をものともせずが食事を続けているとふいにテーブルに黒い影が差した。


「ようようお嬢ちゃん一人かい?」

「こんな場所で寂しくメシなんてなぁ」


野太い声に顔を上げればいかにもな柄の悪い二人組の男が立っていた。
なんでわざわざこっちに声をかけてきたんだろうと思いつつ食べることは止めない。


「ここはなぁお前みたいなガキが来るような所じゃあないんだよ!」

「子どもは早くママのとこ帰っておねんねしときなあ!」


ゲラゲラと何がおかしいのか笑う男達には首を傾げた。
しかし二人がに近づいた時にアルコールの臭いがしたのでかなり酔っぱらっているようだと気づく。
そもそもここは酒場なので酔っぱらいばかりなのだが。

酔っぱらいの絡みほどめんどくさいものはない。こういうのは無視するに限る。
そう思って黙々と料理を口に運んでいたのだが、
二人はが怖くて声も出せなく固まっていると勘違いをしたのかさらにしつこく野次を浴びせかけてきた。
こんな子どもに構っていておもしろいのだろうか。
ため息を小さく吐き出し、そろそろ何か言ってやろうとしたその時だった。

にゅっと両側から手が延びてきたかと思うとその手は男達の頭を掴み、そのままのいたテーブルへと叩きつけられた。
無惨にも真っ二つになったテーブルとぐしゃぐしゃに散乱する食器。
そして白眼を剥いて延びている男達を見やってからが顔を上げるとキッドとキラーがいた。
なるほど二人が男達の頭をテーブルにこんにちはさせたのかと納得する。


「大丈夫か?」

てめぇ何言われっぱなしになってんだよ」

「だってめんどかったんやもん。それにご飯に集中したかったし」


叩き割られる直前に手元に避難させておいた最後のパスタをくるくるとフォークに巻きつけながらは言う。


「あ、もうそっちはええの?」

「片付いた」

「あー、あいつら胸糞悪ィやつらだったぜ」


イライラとした様子のキッドには頭の沸点低いからと心の中で呟いた。
口にしてらまた怒られるので黙っているが。


「他の所で飲み直すぞ」

「かまわないが…はどうする」

「あー、私もうお腹いっぱいなったから先帰っとくわー」


食べ終わった皿を倒れている男の頭に乗せてごちそうさま!と元気に言うと連れ立って出ていくキッドとキラーの背中を追いかけた。



島のログが溜まるのはまだまだ先の事。








もしもキッド海賊団なら









14.3.30