待ちに待ったGW。

新幹線に乗って、待ち合わせの大阪駅に着いた。
約束した場所に向かうと既に小春ちゃんが来ていて、
私に気がつくと手をぶんぶん振って小走りにやってきた。



ちゃーん!久しぶりー!!」

「うげふ!」



ばふっと会うなり私に抱き着いてきて(飛びつくのほうがしっくりくるかもしれない)
思わず潰れたようなうめき声を上げてしまった。

ぎゅうぎゅう抱きしめてくる小春ちゃんの背中に手をまわしてどうどうと落ち着かせる。



「こ、小春ちゃんギブ…!苦しい……!」

「あ、ごめんごめん!久しぶりで高ぶってもうて、つい。」

「はは、相変わらずだね小春ちゃんは。」



にこにこと笑顔で話す小春ちゃんに私もつられて笑顔になる。



「背、結構伸びたね。すっかり私のほうがチビになったよ。」

「えー、そう?あんまし意識したことないから分からんわ〜。
 ふふ、でもちゃんより高いのは嬉しいかも。」

「何で?」

「だって高いほうが抱きしめやすいやんかー!」

「わっと…!それ関係あんの?」



右腕に勢いよく飛びついてきた小春ちゃんをよろけながらも受け止めた。
昔と変わらず引っ付きたがりなのは同じらしい。



「んじゃ、早速行きましょかー。」

「おー。」

「ちょっと返事にやる気ないんちゃう?」

「あるある。超みなぎってるよ。」



こうして2泊3日の大阪旅行はスタートした。













*****











「ぜーったい浮気や!」



四天宝寺中のテニス部の部室で一氏ユウジは声を張り上げた。
ぽかんとする部員達を尻目に一氏は心底憤ってます、という表情をあらわにしている。



「なんやユウジいきなり。」

「小春や、こはる!小春が絶対浮気しとる言うとんのや!」

「浮気も何も先輩ら付き合ってないやないですか。」

「シャラーップ!」



財前の尤もなツッコミを制止すると、一氏は右手をビシッと突き出した。



「最近小春しょっちゅう携帯いじって
 何や嬉しそうやし、どこか上の空って感じやろ!?」

「まあ確かに部活終わったらすぐ帰ってまうしなぁ。」



同意するように謙也が言うと一氏もそやろ!と食いついてくる。



「おまけにや俺はついに重大な情報を掴んだんや!」

「重大な情報?」

「小春の打ってるメールチラ見しよったらGWに誰かと密会しよるって話しとったんや!」

「密会て……。」

「それ以前に人のメール勝手に覗くとか最低っすわ。」

「そこでや!」

「スルーしよったな。」

「密会当日、小春の後をつけようと思う!」

「はあ?」

「それストーキングっていうんちゃうか?」

「浮気かどうか確かめるにはしゃあないやろ。これも愛故にってやつや。」

「そんなんされた時点でアウトや思いますけど。」

「ちゅーわけで例の約束の日に大阪駅に集合な!」

「は!?ちょい待て待て!それ誰に言うとんねん!」

「は?勿論お前ら…白石、謙也、財前に決まっとるやろ?」

「うっわ名指しできよったで。」

「そんなしょうもないことに巻き込まんといて下さい。」

「いや、絶対やで!部の大事な仲間の緊急事態や。
 来な、もう大変なことになるからな!」

「えらい漠然とした大変さやな。」



こうして強制的に小春浮気疑惑を突き止める為に、
テニス部の面々は付き合わされる羽目になってしまった。










*****












「おー、皆よう集まってくれたな!」

「まあ半強制的に近いけどな。」

「ほんまだるいっすわ。」

「まあそう言うたんなや財前。仲間を想ってと考えたれ。」



大阪駅に集合した三人は各々怠さが隠しきれていないが、結局集まってくれるあたり優しいと見られる。



「ほら、早速やけど小春はもう待ち合わせ場所に待機しとる。
 後は浮気相手がどんな野郎か待つだけやっちゅー話や!」

「ちょ、俺の真似せんとってくれる。」

「あ、あれ相手の人ちゃいますか?先輩手振ってるし。」

「なんやて!どこや!」

「声でかいでユウジ。」



食い気味に柱の陰から覗く姿は怪しいことこの上なかったが、本人は至って気にしていない。
財前が指差す方には確かに思しき人がいた。
小春は輝かんばかりの笑顔を浮かべて、その人に抱き着いた。



「ぎゃあああ!こ、小春ー!!」

「やかましいわユウジ!いきなり叫ぶなや!」

「てかその相手の人、女の子みたいやな。知らん顔や。」

「先輩ものすご嬉しそうすっね。めっちゃ仲良さそうですわ。」

「ほんまやなぁ。もしかして彼女か?」

「んなわけあるか!こ、こは、小春に限って
 そんな、あんなアバズレと付き合っとうなんて……!」

「とりあえず落ち着けユウジ。
 よく知りもせんのにそんなこと言うたらあかんで。」

「……だって。」



みるみる落ち込む一氏に一同は慰めの言葉をかけるが(財前は煽っている)、
小春があんなに女の子と仲良くしてるのは見たことがなく正直動揺していた。
普段学校ではそれこそ持ち前のキャラで男女問わず笑かし、分け隔てなく接して人気者だ。
だが今目の前にいる彼女の前では、それとは違う何か別の親しさを感じるのは何故なのだろうか。



「って、あー!また言うとる間に抱き着いてる!」

「なんや小春ベタベタやなぁ。」

「ほら、移動しよったで!俺らも早う行くぞ!」

「……ほんま帰っていいっすか?」















それぞれの大阪にて。









11.1.30