しとしとしと。
細かい雨がたくさん降って、地面や木々を濡らしていく。
教室から窓に叩きつける雨をじっと眺めた。そういや今日で3日連続雨だな。
ぼんやりしながら紅茶オレを啜っていたら斜め前の席に座っていた丸井君が盛大にため息をついた。
「わざとらしいため息ついてどうしたの丸井君。」
「わざとじゃねーよぃ。ガチだし。
雨ばっか降ってるからちょっと落ちてんの。」
「あー、そうだね。雨嫌いじゃないけどこうも続くとね。洗濯乾かないもの。」
「お前は主婦か。」
「誰でも気になることでしょうが。」
丸井君はいつものガムを噛みながら隣の川西君の席に座った。
また大きくため息をつくと窓の外を恨めしそうに睨む。
「雨ばっかだからさ、部活も外でできねぇし
室内で筋トレばっかなんだぜ。マジありえねぇ。」
「そっか、そういやそうだね。」
「もうすぐ大会も近いってのによー。」
「大会?そんなのあるんだ。」
「は?当たり前だろぃ。結構でかい大会なんだけど知らねぇの?」
知らないと頷けばこいつバカじゃね?みたいな顔をされた。(失礼な)
まあどんな運動部にもそういえば大会とかそんなのつきものだし当たり前っちゃ当たり前か。
(それに去年真田君が何とかって大会で優勝したとか話をした気がする)
残りの紅茶オレを啜ったら、ズコー、と間抜けな音が立った。
ぐしゃりとパックを潰したと同時に「せんぱーい!」と聞き覚えのある声がした。
声のした方に顔を向ければ、切原君が軽く手を降って教室に入ってきた。
「先輩借りてたゲーム返しにきました。」
「ん、わざわざありがと。どうだった?」
「ストーリーは単調でしたけど、戦闘とサブイベントが良かったっスね。」
「でしょう。ああいうベタな路線も結構好きなんだよねー。」
「何?またゲーム?」
「うん。前に切原君に貸してたの。」
「あ、丸井先輩いたんスか。
何か今日は妙に覇気がないから分かんなかったっス。」
「喧嘩売ってんのか赤也!」
「ちょ、いたたたっ!首!首締まってるっス!」
丸井君が切原君の首に腕を回して締め上げる。
そんな様子を微笑ましく見てたら、タップを取って外してもらった切原君に微妙な顔をされた。
「何でそんな微笑ましそうな表情なんスか。」
「え、違うの?」
「表情の選択間違いっスよ。」
「おやまあ。」
気のない会話をする私達を横に丸井君は怠そうに膨らましたガムをぱちんと割った。
ぶっすりして本当機嫌悪そうだな。
「そういや丸井先輩は何で不機嫌なんスか?」
「別に不機嫌じゃねーし。」
「丸井君は部活が雨でまともにできないからカリカリしてんだよ。」
「あー、成る程。確かに雨続いてますからねー。」
切原君が窓の外をちらと見やる。
相変わらず分厚い灰色の雲が空を覆っていて、当分お天道様は拝めそうにない。
「参っちゃいますよねぇ、部活室内ばっかで気が滅入るんスよ。」
「だよなぁ。……あー、何でもいいから早く晴れてくれよぃ。」
「そうだねー。」
ぐでんと上半身を机にもたれる。
なんとなく気分までもこうふさぎ込んでしまう。
丸井君も頬杖をつきながらどこか宙を眺めていたが、
何か気がついたのか「あ。そうだ」と小さく声をもらした。
「そういや、その口ぶりだと俺達の試合見たことないんだろぃ?」
「うん、まあ。」
「だったら今度の大会見に来いよ!俺の天才的妙技見せてやるぜい。」
「うわこの人自分で天才とか言っちゃったよ。」
「うるせー。本当だからいいんだよ。」
「でも確かに先輩見たことないから、丸井先輩のテニス。
俺も結構すごいんスよー。なんせテニス部のエースなんで!」
「どうだかなぁ、1年の時真田達にフルボッコにされてて泣いてた癖に。」
「な、泣いてないっスよ!あん時よりめちゃくちゃ強くなってるから!」
「まあ、まだ敵わないだろうけどなー。」
「あああ、もう!うるさいっスよ丸井先輩!」
丸井君はにやにや笑いながら切原君をからかっている。
言われてみれば立海にいながら有名なテニス部の試合を見たことがない。
ちよちゃんを除く友人達はこぞって見に行ったりしてたみたいだが、
自分は興味がなかったので友人が語るテニス部の話はあまり覚えていない。
(いつも相槌だけはうまかった)
このクラスに丸井君と仁王君がいて関わるようになってから、
急にテニス部の話がよく出るようになったのだった。
思えば去年は真田君がいたのに全然そういった話をしなかったな。
あ、そういえば真田君とちよちゃん絡みの攻防戦でそれ所じゃなかったんだった。
「ん、そうだな、見てみたいかもテニスの試合。」
「お、それなら大会でやる日またメールしてやるよ。」
「先輩絶対応援来て下さいよー。俺のすごさが分かりますから!」
「はいはい。」
詳しい日程とかは丸井君が連絡してくれることになった。
あれだけ皆が騒ぐ程のテニス部の試合。うん、楽しみかも。
じめじめする。
それから晴れるようにティッシュで作った私作のてるてる坊主は二人に不評だった。
後から来た仁王君も顔面が不吉と罵られてしまった。ちくしょう。
11.2.20