次は絶対忘れないと誓っただけに、私はカレンダーに印をつけ、携帯のアラームまでセットしてその日を迎えた。
逆にそこまでしないと覚えられないのかとつっこまれそうだが、念には念をというやつである。備えあれば憂いなし。





事前に調べた場所に行くと既に会場は両校の生徒でごった返していた。
とは言え大半が立海の生徒だったのだが。

何せテニス部だけでもかなりの人数で、レギュラーじゃない部員も含めたら相当な数だ。
あの中から数少ないレギュラー枠を勝ち取っている丸井君や仁王君達はやはりすごいと改めて感じた。
(ましてや切原君は2年である)

おまけによく見れば他校の人も来ている。
(あの人達もテニス部だろうか)

あとは応援の数もすごい。
チア部もその中に加わっているので応援も本格的だ。
私も適当な席に座って応援することにした。






試合が始まるとますます歓声は大きくなった。
その迫力に若干気圧されつつも、負けないように一応声援を送る。
(掛け声とかも決まってて驚いた)

相手は青春学園という所らしい。

コートに整列して変わった髪型をした部長らしき人が真田君と挨拶を交わす。
その際部長さんが立海に宣戦布告みたいなものをして、
何かスポーツのそれっぽくて、おお、と一人静かに感嘆した。








試合が始まりしばらくして持った感想は……あれ?テニスってこんなスポーツだっけ?である。


一人一人追っていくと丸井君、桑原君ペアは丸井君の妙技とやらが
ネットの上にボール転がしたり、鉄柱にボール当てて入れたりそんなことできんのかよって感じだし、
桑原君は桑原君で普段の常識人苦労人な気質を跳ね退けて、
ファイヤー!って叫びながら力強い球打つわ体力半端ねぇわ粘り強いわですごい。


仁王君、柳生君ペアは最初相手にボールぶつけて冷や冷やしたが、無事に試合再開されてよかった。
柳生君のめたくそ速いレーザービームとか仁王君のトリッキーな試合運びにまたも呆気に取られていたら、
何と仁王君と柳生君が入れ替わっていた。つまり仁王君が柳生君で柳生君が仁王君。

……ややこしいなおい。

つかいつから入れ替わってたんだろう。全然気づかなかったよ。
そういえば友達から仁王君は詐欺師って呼ばれてるって聞いたことがある。なるほど。
(でもあれってありなのか)


シングルスの試合になって最初は柳君の試合だった。
どうやら相手の人とは友達だったらしく、しかもデータマンっていう所まで同じらしい。
相手の先の先を読む柳君のテニスに相手は自分のプレイスタイルを捨てて、
一瞬自棄になったのかと思いきやそれすらも計算してやったもので、お互いすごい頭脳も尽くした試合だった。
(流石は柳君)


お次に出てきたのは切原君で、目が充血して真っ赤になるわ、相手にボールぶつけるわなんやで、
ものすごく冷や冷やさせる試合だった。とても荒々しいやり方である。
普段からやや生意気な後輩君だと思っていたが、まさかテニスとなるとあんな形になっていたとは。
なんだか見ているこっちまで非常に心臓に悪いです。


試合は立海有利と思いきや、相手の青春学園もなかなか手強く大将戦まで縺れ込んだ。


最後は真田君の試合で、これによって立海か青春学園が勝つか決まる。
真田君はやっぱり強かった。
風林火山っていうものすごく真田君に似合う技(というか奥義)を繰り出して相手を圧倒していた。
というか相手の人はなんとまだ1年生だった。
でもその子も無我のなんたらとかいう、何かオーラみたいなのを出してたし侮れない。
真田君がガンガン押していたのだけれど、
相手もなかなかの手練れで私はその凄まじい試合にただ息を呑んで見るしかなかった。









*****









会場内に淡々とアナウンスが響き渡る。
試合は全て終了した。




立海は負けてしまった。


常勝を謳い、勝ち続けてきたという立海が負けたのだ。
私はテニス部の試合を見たのは初めてで、強いすごいと聞いていたのは皆がそう話をしていたからだ。
だから私も漠然とだが立海テニス部はそんなに強い所なのかすごいな、とやわい刷り込みが頭のどこかにあった。
でも今まさにその立海が負けてしまった。

周りの落胆する空気。

遠くに見えるテニス部の皆もさぞ悔しい思いだろう。
私にはその勝敗の重みは分からないが、
皆から滲み出る雰囲気からそれが大切だということが少し私にも分かる気がした。
(本当に彼らの気持ちは私が簡単に分かっていいようなもんじゃないけど)

表彰式の時に真田君は準優勝のトロフィーの受け取りを断っていた。優勝にこそ意味があるからと。
それでもここまで頑張ってきたことには違いないから、
何だか少しもったいないように思う私はやはり少しズレているのかもしれない。



表彰式を見送ってから席を立つ。
これから多分色々話とかあるんだろうし、今私なんかが声をかけていいのか分からない。
まばらに帰って行く観戦者に混じって私も帰宅した。
















初観戦と敗北の重み。










11.3.6