長い夏休みも油断してるとあっという間に過ぎてしまう。
なので出来るだけ宿題を適度に熟しつつ、ちよちゃん達と遊び歩いた。
私が希望していたプールにも行った。
予想通り人でごった返していたがなかなかに楽しかった。
夏祭りは来週開催されるのでそっちにも行く予定だ。
そして、じりじりと照り付ける日差しを浴びながら、絶賛夏休み中であるが、私は学校へと向かっていた。
何をしに行くかというと補習とかそんなんでなく、図書室でちょっとばかし遊ぼうかと思ってである。
夏休み中の図書室は図書委員であれば、図書担当の先生から鍵を貰って自由に使うことができる。
先生は夏休み中はバレー部の顧問なので、ほぼ毎日学校にいるし
先生自身もゆるい性格なので大抵のことは委員のよしみで許してくれる。
(まあ常識の範囲内での話だ)
おまけに図書室は勿論禁止だが、隣のドア一枚隔てた図書準備室でなら飲食も許可されている。
零さない散らかさない最後はきちんと片付けるの三拍子を守ればオッケーなのだ。
先生も自分の家から持ってきたミニ冷蔵庫を準備室に持ってきて、常にアイスとコーラを常備している。
(先生はこの2つがないと生きていけないらしい)
そんなわけで暇を持て余した私は、さっさと先生から鍵を貰って涼しい図書室に引きこもった。
一応いる間は図書の貸出業務も行う。
夏休み中はこうして図書委員の気まぐれで開館されている。
たまたま開いてる時に居合わせた生徒は利用していくが、滅多に人は訪ねて来ない。当たり前だが。
夏休み前に借りていた本を自分で返却手続きをして本棚へ戻す。
適当な本を見繕って準備室へ入り、
備え付けのテーブルに鞄やコンビニで買ってきたお菓子やジュースをどさどさと置いた。
選んできた3冊の内、初めにどれから読もうか考えて、目を閉じて掴んだものから読むことにした。
時折ジュースを飲み、マイ箸でポテチをつまみながら本を読んでいく。
本の世界にのめり込んでいると、チリンチリン、と突如響いたベルの音で現実に引き戻される。
この音は図書室利用者が図書委員を呼び出す音だ。
図書室はなかなかに広いのでカウンターから離れて作業していると
貸出をしたい人が来たことに気づかないことがある。
そこでカウンターが無人の時は用がある時にベルを鳴らしてもらうことになっているのだ。
「はいはーい。今行きますよー。」
なるべくでかめの声で答えながら本に栞を挟んで立ち上がる。
準備室の扉を開ければカウンターに誰か立っていた。
その人はテニス部のジャージを着ていてこちらに気づくとにこりと笑みを浮かべた。
肩にかけたジャージの上着がふわりと舞う。
「すみません、待ちましたか?」
「ううん全然。……君、確かさんだよね?」
カウンターの内側へ回って腰を下ろしつつ謝罪すれば、思わぬ言葉が返ってきた。
あれ、どこかで会ったっけ?と思わず端正な顔を二度見すれば苦笑された。
ああ、そうだ。思い出した。
「おお、幸村君だ。」
「…ちょっと忘れてたでしょ。」
酷いなぁ、と笑いながら言う幸村君に私は慌てて謝った。
そしたら本人は「いいよ」とさして気にしていないようだ。
「久しぶりだねー。そうそ、退院おめでとう。」
「ふふ、ありがとう。」
「もう体調はいいの?大丈夫?」
「うん。もうすっかり良くなったよ。」
「そっか。それはよかった。」
ぽつぽつとそんな会話をしながら、幸村君から借りる本を受けとってカードに記入する。
どうやら借りる本から見て、勉強に必要な資料のようだ。
「夏休みも図書室って開いてるんだね。」
「いつもってわけじゃないんだけどね。
図書委員は先生から鍵もらって、自由に開けることができるんだ。だから今日はたまたま。」
「へえ、じゃあさんを呼び出せば夏休みでも図書室が使えるんだね。」
「え。……そりゃあそうだけど私にも一応日にちによって都合というものが。」
「あはは、冗談だよ。誰もそんなパシリにしようなんて言ってないよ。」
くすくす笑いながら幸村君は顔の前で手を振った。
でも何か幸村君が言うと何が何でも駆け付けないといけない気がするのは何故だろうか。
言ってる事とその綺麗な笑顔が恐いです。
(しかもさりげにパシリって……)
手続きが終わって本を渡す。
「これからまた部活ですか?」
「そうだよ。次は全国大会だからね。気合い入れないと。」
「そっか、がんばってね。」
「うん。じゃ、もう行くね。」
「おお、バイバイ。」
ふらふらと手を振れば、幸村君もやんわり微笑んで振りかえした。
そのレギュラージャージが眩しい背中を見送ってから、軽く息をはく。
久しぶりに見た幸村君、何か妙に迫力があったなぁ。
お顔が大変綺麗だということも含めてだけど。
それだけ全国大会への意気込みがあるってことかな。分からないが。
準備室に戻ってまたおやつを食べながら夕方近くまで本を読んだ。
読み切れなかった分は借りて帰ることにしました。
図書室でお久しぶり。
11.3.6