全国大会決勝。
いよいよこの日を迎えて、私はただ応援するだけだというのに無駄に緊張した。
試合が始まって立海は順調に勝っていった。
と言っても真田君は身体が大変なことになってたし、
柳君切原君ペアは柳君がうまく切原君をコントロールしてたけど、
また悪魔化して相手選手をボコボコにしてしまった。
はらはらするけど白熱した試合に魅入ってしまう。
勝ちは勝ちだ。今は大丈夫。
次は仁王君の試合だ。
相手は前に白石君と戦ってた人だ。
白石君は勝ってたけど、この人もとんでもない技を使うから油断できない。
(何せ目が見えない状態で切原君に勝ってたし)
とんとんと試合は進んだ。
アナウンスが青学の人の勝利を告げる。
―仁王君が負けてしまった。
立海がリードしているけど、仁王君自身の気持ちを考えると少し複雑だ。
また喉の奥がぐっと絞られるような感覚がした。
試合を終えた仁王君が、何故か立海のベンチ側には戻らずにこちらへと歩いてきた。
え?何でこっち?
疑問符を飛ばしていると、
仁王君すたすた観客席の間を縫って、私の隣に来るとどっかりとその席に座ってしまった。
「え、ちょ、仁王君。」
「……なんじゃ。」
「なしてこちらへ?」
「気分じゃ。」
「戻らなくていいの?うわ、真田君がめっちゃこっち見とるよ。」
「…今戻ったら真田の鉄拳が飛んでくるきに。暫くこっちおる。」
「おやまあ。」
唇を尖らせそう言ったけど、それだけではない…と思う。
鞄の中から自分が使う為に持ってきてたタオルを取り出すと仁王君の頭にばさっと被せた。
少し大きめのタオルは仁王君の頭から肩ぐらいまでをすっぽりと覆ってしまう。
「な、」
「ちょっとだけ貸してあげる。」
「……。」
「まだ、終わってない。それと、」
ちらと横に座る仁王君を見れば、被ったタオルの隙間からちょっとだけ顔を覗かせこちらを見ていた。
「もしクソ重たいなら全部吐き出しちゃえば楽になるかもよ。」
そう言えば仁王君は切れ長の目を丸くさせて、それから慌てたように顔を反らした。
深くタオルを被り直し俯く。
「すまん、の。」
ぽつりと零れた言葉に返事をする代わりにぱすぱすとタオル越しに頭を叩いた。
ぽたりと雫が一つ落ちて、アスファルトにじわりと染みをつくった。
*****
ざわざわとした喧騒から抜け出して、一人夕暮れの道を歩いていた。
立海は負けてしまった。
最後の幸村君まで回ってきて、力を尽くして頑張っていたけど負けてしまった。
幸村君と戦った1年の子はとても強かった。技術だけじゃなく精神的にも。
幸村君の五感を奪うという驚異的なテニスにも心折れることなく最後まで戦い貫いた。
立海は惜しくも2位で三連覇とはいかなかったけど、
私はこんなにも努力して精一杯打ち込めるものがあるなんて羨ましいとも思った。
負けたけどそれだけじゃない色んなものを沢山得られたんじゃないかと思う。
切原君はだだ泣きしてて、皆悔しそうだったけど。
……何だか妙にくさいこと考えてしまった気がする。
じんわりと侵食するように広がる夕日と先程まで観戦していたテニスのせいなのかもしれない。
帰路を辿る中、やけに日の光が目に染みるような気がした。
そして夏が終わる。
11.3.20