明くる日、この怪我に対してクラスの皆からどうしたのか心配されたけど、
階段から転がり落ちたということにしておいた。(昨日はそのまま早退した)


丸井君には鈍臭いなー、と笑われたが
横にいた仁王君が無言で丸井君の頭にチョップをくらわしてくれた。
多分庇ってくれたのだろう。(仁王君とちよちゃんには口止めしてあるし)





そんなこんなでまた普段通りに生活してたら、廊下をぶらぶらしてる時に柳君に声をかけられた。



「どうしたの柳君。」

「怪我は大丈夫か?」

「うん、平気。大したもんじゃなかったし。」

「…そうか。ああそうだ、これを……。」

「ん?うお!こ、これは学食で売り切れ続出で
 滅多にお目にかかれないあのフルーツサンドでは!?」

にやろうと思ってな。」

「え!まじでか!いいの?もらって。」

「勿論だ。」

「うっわ、やったー。てか何で私に?」

「気にするな。ただの気まぐれだ。」

「ふーん?ま、いいや。ありがとう!」

「ああ、じゃあな。」



柳君はふっとやんわり微笑んで立ち去って行った。

ううん、一体どうしたというのだろうか……。

まあ何にせよラッキーである。
足取りも軽く教室へと戻ることにした。


















*****















フルーツサンドは噂通りめちゃくちゃうまかった。
あのふわふわのパンに挟まれた丁度いい甘さの生クリームと
たっぷり盛り沢山なフルーツの絶妙なバランスがたまらない仕上がりでした。

ああ、思い出しただけでよだれが。
また食べたいな。

柳君には後でめちゃくちゃお礼言っとこう。


そんなことを考えて悦りながら財布から小銭を漁る。
今は自動販売機の前でジュースを買おうとしてるのだが、なかなか100円が見つからない。
なんでこんな10円と1円がやたら多いんだマイ財布。

若干切ない気持ちになりながらようやく見つけだした100円を投入しようとしたら、
後ろからにゅっと腕が伸びてきて先に誰かが100円を入れてしまった。

まずい、後がつかえてたのかと謝ろうと振り返ればそこには微笑みを湛えた幸村君がいた。



「あ、ごめんね。後ろ並んでるって気がつかなくて。」

「いや、違うよ。さんレモンティーは好き?」

「え?ああ、うん。好きだけど。」

「じゃあそれにしようか。」



ピッと長い指がレモンティーのボタンを押し当てる。
何故幸村君は私に聞いたんだろう。

疑問に思ってるとガシャンと落ちてきた
レモンティーのパックを取り上げて、はい、と私に差し出してきた。



「はいって…私にくれるの?」

「うん。」

「何で?」

「ほんの気持ちだよ。」



今だ受け取らずに目を瞬かせている私にレモンティーを握らせる。

それから幸村君はふんわりと綺麗な笑みを浮かべ
「ありがとう。」と一言残してから優雅に去っていった。

今私の頭の上に大量のはてなを撒き散らしていることだろう。
何で幸村君が私にジュースを奢ってくれたんだろう。
まあ、貰った物は有り難く頂戴しよう。
パックにストローを刺して飲みながら教室へと帰った。














教室に戻ってから一連の出来事を仁王君に話すと、
どうやら昨日のアレに関するお礼だろうと言われた。

何とあの二人には知られていたようだ。

柳君はいつもどっから仕入れたか分からない情報網があるからあれだけど、
仁王君によると幸村君もあの場を目撃していたらしい。

いやあ危ない危ない。



「他に言い触らすような奴らじゃないから安心せい。」

「うん、そだね。しかしどこで誰が見てるかわかんないよね。
 いわゆる壁に耳あり障子にメアリーってやつ?」

「障子に目ありじゃろ。メアリーって誰。」

「ん?そうだっけか。気にしない気にしない。」













感謝された日。













11.6.12