文化祭の準備は着々と進んでいった。
衣装を揃えたり、足りない所は作ったり、後は教室の飾り付けとか諸々その他。
肝心の喫茶店のメニューは簡単かつ無難なものにして、料理が得意な子が担当することになった。
そして文化祭本番まであと少しである。
今は私達だけでなく学校全体がお祭りムードに包まれていて、
わくわくそわそわしていて何だか楽しい。
毎年そうなのだが、やはりこういう行事は楽しみである。
喫茶店のセットを作る手伝いをしてたら、ガムテープが切れてしまった。
「あちゃー、ガムテープ無くなったな。」
「私買ってくるよ。」
「ごめんな。さんきゅ。」
「あれ、さんホームセンター行くの?
じゃあついでに白の縫い糸買ってきてー。」
「あ!こっちも緑のペンキ買ってきて!」
「さんこういう形のレースあれば買ってきてほしいな。」
「……りょーかい。」
私が買いだしに向かうと分かった瞬間、皆があれよあれよておつかいを申し出てきた。
おいおい皆ついでだからってここぞとばかりに頼むなよ。まあいいけどさ。
委員長から文化祭用のお金を貰って、財布を片手に出発した。
*****
ホームセンターに到着して、目的の物をさっさと購入する。
頼まれた物が全部あってよかった。
少し疲れたのでちょっとだけ休憩しようと、すぐそこにあった自販機でサイダーを買った。
備えつけであったベンチに座り、だらだら飲んでいると
立海の制服を着た男子がホームセンターから出てきた。
こちらをちらと見て気づいたのかこっちにやって来た。
あれは確か……。
「おや、さんではないですか。」
「や、柳生君違うんだよこれは別にサボってるわけじゃなくてですね……。」
「誰もサボってるなんて言ってませんよ。」
そう言って柳生君は軽く微笑んだ。
このまま座っておくのも何なので買い物袋を引っつかんで立ち上がった。
「もうよろしいのですか。」
「うん。ちょっとだけ休憩してただけだから。ちょっとだけ。」
「ふふ、そんなに強調しなくても分かってますよ。では一緒に学校まで帰りますか。」
ホームセンターの敷地を出て学校へと歩き出す。
「柳生君も文化祭の買い出し?」
「ええ、細々と足りない物が出てきましたので。」
柳生君は片手に持った袋を掲げた。
ふらふら歩く私に対して柳生君はいつでもピシリと姿勢を正して歩いている。
仁王君なんかは物凄い猫背だけど。
そう思うとこの二人って対照的だなぁ。
今もさりげに歩調を合わせてくれたり、
車道側を柳生君が歩いてくれたり細かい気配りがすごい。
本当に紳士だと実感しました。
「柳生君のクラスは何するの?」
「執事喫茶ですよ。」
「マジでか。」
「はい、女子はメイドの格好ですが。
何でも今執事とメイドがブームだそうで。」
「ううむ。確かにそうだけどさ。
しかし真田君と柳生君の執事とか……。」
「おかしいでしょうか?」
「全然。むしろすごい似合うと思うよ。うわ、絶対行くよー。」
「ふふ、ぜひ遊びに来て下さい。」
残りのサイダーをぐびりと飲みながら、ふと気がついたことを柳生君に聞いた。
「そういえばテニス部は何するの?」
「おや、仁王君から聞いてませんでしたか?」
「うん。なんか自分のクラスのに集中してて聞いてなかった。」
「今年は演劇をするんですよ。」
「へえ。演目は?」
「シンデレラです。」
「ぶほっ!」
さらりと言いのけた柳生君の爆弾発言に思わず飲んでたサイダーを吹き出してしまった。
(最後の一口だったのに…)
ごほごほむせ返る私の背中を柳生君が摩ってくれた。
「大丈夫ですかさん。」
「う…うん。なんとか。
柳生君がいきなりびっくり発言したからつい……。」
「そうですか?まあ最初幸村君が
シンデレラをやると言った時は驚きましたが。」
「一体どうしちゃったの幸村君。
何でシンデレラ…?女の子いないじゃん!」
「ええ、ですから私達が女装をしてやるんですよ。」
「マジでか!」
本日2度目のマジでかが出た。いやいやなんてこった。
まさかテニス部でそんな面白おかしい事になってたなんて…。
くそう仁王君と丸井君何で言ってくれなかったんだ。
腹抱えて爆笑するのに……!
「ちなみにシンデレラ役は切原君ですよ。」
「切原君が!?何それやばいじゃんもう絶対面白いでしょ。」
「切原君は今だに嫌だとごねてますけどね。」
「そりゃあまあごねるでしょうね普通は。あとの役柄は?」
「うーん……そうですね、
見てのお楽しみ、ということにしておきましょうか。」
「えー。…うん、楽しみにしておく。」
柳生君は面白そうにくすくす笑った。
私も切原君のシンデレラを想像して吹き出しそうになる。
ああ、文化祭が更に楽しみになったなぁ。
今年は一味違います。
「よー。シンデレラ今日も元気に張り切ってるねぇ。」
「えっ!ちょ、何で先輩知ってるんですか!」
「私の情報網を甘く見んなよ。
…と言いたい所だけどもう学校の大半は知ってるんじゃない?」
「まぁ、確かにそうっスけど。」
「期待してるよシンデレラ。」
「あー!もう!その呼び方止めて下さい!」
11.7.18