四苦八苦しながらも着々と文化祭の準備は進み、
いよいよ文化祭もとい海原祭の開催当日になった。








*****








さん、アイスティーとオレンジジュース3番テーブルね!」

「了解!」


お盆に乗せられたドリンクを零さないように気をつけながらテーブルへと運ぶ。


「お待たせしました。アイスティーとオレンジジュースです。」

「ありがとうー。」


にこりと営業スマイルを浮かべて渡すと、
相手のお客さんの女の子もふわりと笑ってくれた。

コスプレ喫茶は大盛況であった。
元々海原祭はなかなか大きな文化祭であるだけに、
人がたくさん集まって来るというのも手伝っていた。
おまけにこの美男美女揃いのコスプレ姿ときた。
正直これを目当てに来る人も多い。
それにコスプレの格好が珍しいというのもあるのだろう。
今も脇屋君が他クラスからやってきた同級生にからかわれながら写メを撮られている。

不運にもこの企画の提案者でもある脇屋君は
セーラー服のコスプレを引いてしまったのだ。哀れ脇屋君。
他の皆も各々某戦隊モノの格好やアニメ、ゲームのキャラ等見事な変身を遂げていた。

皆接客しつつ写真撮影に応じたり忙しい。
特に仁王君や丸井君達美男美女グループは写真を撮られまくっていた。
なんかどっかのアイドルの撮影会みたいで面白かった。
あの二人のコスプレの完成度が高すぎて初めて見た時は逆に笑えたもの。
だって二人共違和感がなさすぎる。むしろ違和感が来い。

今も女の子達に笑顔で接客している丸井君を見てすごいなと感心した。
あれじゃまんまホストではないか。
仁王君はというと女の子と一緒に写メを撮っていた。
あ、こっちは困惑気味だ。
他にもクラスの子が一緒にポーズ決めながら写真撮っている。

皆楽しそうで良かった。
一人納得してうんうん頷いていると、バシンと後頭部に衝撃が走った。


「何一人で悟り顔で頷いてんのよ。」

「ちよちゃん箒でどつかないでよ。地味に痛い!」


ちよちゃんは魔女コスのオプションである箒で私の頭を叩いてきた。
とんがり帽子が可愛いですね、と改めて褒めたらまたパシンと叩かれた。


「ぼさっとしてないで次外回りの時間でしょ。さっさと行ってきなさい。」

「おお、そうだった。」


交代で外を回ってお客さんの呼び込みをしなくてはならない。
私の前がちよちゃんだったので呼びに来てくれたのだろう。
呼び込みに使う看板と白のレースが被さったバスケットを手渡してきた。


「ちよちゃんこのバスケットは…?」

の赤ずきんのオプションよ。
 バスケットにぶどう酒とパン、赤ずきんと言えば当然でしょ。」

「何その無駄なこだわり。しかもぶどう酒じゃなくてウェルチだし…。
 おまけにパンもあんパンとクリームパンて。もっとこう…あるじゃないの。」

「未成年が酒持てる訳ないじゃん。細かいことは気にしないの。」

「ウェルチ地味に瓶だから重いし!
 何か嫌がらせにしか思えないんだけど!」

「うるさい。ぐだぐだ文句言ってないでとっとと行きなさい。」


ドンと背中を押されて教室から追い出された。酷いやちよちゃん。

はあとため息をつくと渋々呼び込みをするため廊下を歩きだした。







*****







「多種多様の衣装を身に纏った美男美女に
 囲まれてお茶しませんかー?おいしいケーキもありますよー。」


看板を掲げ、道行く人達に呼びかけながらしっかり宣伝する。
中には興味が向いてくれたのか、何人か行ってくれる人もいた。
3年の教室が立ち並ぶ廊下を歩いていて、ふと柳生君が執事喫茶をやるという話を思い出した。

よし、ついでだから見て行こう。





3-Aの教室に着くと執事喫茶と掲げられた看板が目に入った。
中を覗くとそこもなかなかの賑わいだった。

ううむ、これはうちのコスプレ喫茶も負けてらんないな。
肝心の柳生君と真田君の姿を探していたらすぐ傍で声がした。


さん。」

「あ、柳生君。やっぱりすごい似合ってるね。」

「ありがとうございます。」

「む、か。」

「おー。真田君もなかなか決まってますな。」

「褒めても何もでないぞ。」


少し照れたようにそっぽを向いた真田君に
いつもとのギャップでかわいらしく思ってしまった。
まあ口には出さないけどね。


「やあさん。その格好はどうしたんだい?」

「幸村君。赤ずきんだよ。うちのクラスの出し物コスプレ喫茶だから。」

「へえ赤ずきんか。てっきり防災頭巾かと思ったよ。」

「さらりと酷いこと言ったよこの人!」



幸村君からにっこり笑顔でけなされて思わずぐさりと痛んだ胸を押さえた。


「そうかそんなにおかしいのか。
 いや自分でも似合わないなと思ってたんだけど……。」

「そ、そんなことないですよ!
 とてもよくお似合いです。ね、真田君!」

「あ、ああ…そうだな。まごうことなき赤ずきんだ。」


しょんぼり肩を落としたら柳生君と真田君が慌ててフォローしてくれた。
ありがとう。君達は何て優しいんだ。

幸村君は冗談だよー、何てあははと笑いながら
背中をばしばし叩いてきたけど正直冗談に聞こえなかった。
(そして地味に力強いな)

あれ幸村君ってこういう感じだっけ…?
何となしにちらりと真田君達の方を見たら悟ったような目でただ首を振った。
成る程2年の時に言ってた言葉の意味が少し分かった気がするぞ。

幸村君がまあ座りなよと椅子を勧めてきたので、テーブルを挟んで前の席へ座った。
あれ、ていうかここ幸村君のクラスじゃないよね?勝手に椅子とか座ったけどさ。
その疑問を見越したのか幸村君が細かい事は気にするなと言われた。
おやなんかデジャヴュが。

悶々としてたらお客さんが来たようだ。
うちとは違う制服を着た男の子2人が柳生君と真田君と会話している。
ん?なんかあの二人見たことあるような……?



「やあ、桃城に越前。海原祭へようこそ。」

「幸村さん!」

「……どうもっス。」


幸村君とお二人が話し出したのを見て思い出した。
そうだ、大会で優勝した青学のテニス部の人だ。
一人合点がいってすっきり満足してたらお二人と目があった。
何だか微妙な表情なのはこの格好のせいだろうか。


「どもー。3-Bのです。
 コスプレ喫茶やってるんで気が向いたら来てねー。」

「あ、はい!えっと……。」

「彼女は私達の友人です。
 大会にも応援に来て下さってたので貴方達の顔もご存知なんです。」

「ああ、成る程そういうことで。
 俺、青学の桃城っていいます。こっちのちっこいのは越前です。」

「ちっこいは余計っスよ。」

「あー、そうそう。
 全国大会で小春ちゃんとコント紛いの試合してた人だ。」

「コントじゃないっすよ!
 てか小春ちゃんって知り合いですか?」

「うん。まあ従兄弟だから。」

「マジですか!?」



桃城君は大袈裟なリアクションをとってくれた。
四天宝寺の皆といい勝負である。


さんて四天宝寺の金色と従兄弟だったんだね。」

「そうだよー。ちっさい時は大阪住んでたし、仲いいんだ。」

「……ということはさんも
 なんかソッチ的な要素があったりするんすか?」

「無いよ!私女だからね。
 つかうちの家系を何だと思ってんだ。」

「あはは、ですよねー。」




小春ちゃんとの関係について少し話した所で、
幸村君が二人をシンデレラの劇をやる舞台へと案内しに行った。
ひらひら手を振って見送り、真田君と柳生君に別れを告げてから教室を後にした。

さて、私も仕事しないとな。












海原祭開催。









11.8.15