ばたばたと慌ただしく時間は過ぎていき、忙しいピークは一先ず落ち着いた。

あともう少しで舞台発表の時間である。
吹奏楽や軽音部の音楽モノとか演劇部の劇などの発表が行われる時間だ。
部活だけでなくて有志の人達も発表したりするのでなかなか規模は大きい。
毎年面白いものが多いので楽しみだ。今年はテニス部のシンデレラもあるし。


少し休憩してトイレを済まして出てきたら隣の男子トイレがやけに騒がしかった。

一体何をそんな喚いてるのだろうと気になって通り抜けざまにちらりと
中を見たら幸村君をはじめテニス部の人達と青学の二人が1つの個室の前に群がっていた。(なんでだ)
思わず二度見してたら仁王君とがっつり目が合ってしまった。



「あ、。」

「……こんにちは皆さんお揃いで。何してるんですか。いじめ?」

「ばか。んなわけないだろぃ。
 赤也が本番前になっていきなりドレス着るの嫌だって篭っちゃったんだよ。」

「はあ、成る程。」

「そうだ。さんからも何か言ってやってくれよ。
 もしかしたら気が変わって出てきてくれるかも。」

「いやそんな私ごときが言ったとこで変わらないかと…。てかここ男子トイレ……。」

「じゃあ今だけ男ってことでいいんじゃないかな。」

「よくないよ!何その大阪のおばちゃんみたいな発想!」

「まあまあいいじゃないか。どうせ俺達しかいないんだし。」



そう言って幸村君は私の手を引っ張って、中へと連れ込んだ。
うわあ入っちゃったよマジで。



「あああ、これ他の人に見られたら絶対変態だよどうしよう。」

「そう心配するな。
 何もやましいことはないのだから大丈夫だろう。一応扉は閉めておくが。」

「ありがとう柳君。お気遣い痛み入ります…。」



柳君の気遣いに感謝していると、幸村君が早く何か言えと目だけで促してきた。
最近彼がやけに恐い感じなのはこれが素だからだろうか。
とりあえず切原君が引きこもる個室の前に立つと軽くノックしてみた。



「切原君、出ておいで。皆困ってるよー。」

「嫌っス!どうせ先輩も俺の格好見て笑うつもりなんでしょ!」

「そりゃあもうばくしょ…痛っ!」

「バカ!火に油注ぐようなこと言うな!」

「ごめんつい……。」



思わず口を滑らしそうになったら、言い切る前に丸井君に頭を叩かれた。

うーん。どうすればよいものか。



「切原君。」

「……なんスか。」

「この前貸したドラクエ5なんだけどさ、
 実はあの後主人公がい…「わー!何いきなりネタバレしようとしてんスか!」
 ―だって切原君出てこないから。…で、実はラストが」

「ぎゃー!さんそれ今俺もやってるんで勘弁して下さい!」

「桃城君も?お嫁さん誰にしたの?」

「ビアンカっす。」

「あー、いいよねビアンカ。
 小さい時から知ってるもんねー。でも私デボラにしたよ。」

「新しいキャラにも惹かれたんすけどねー。
 でもやっぱりこれは外せなかったんですよ。」

「ちょっと本題からズレてドラクエ談義しないでくれる。」

「ごめんなさい。」



桃城君と地味に盛り上がってたら幸村君に一喝された。



「ネタバレ駄目絶対作戦でもいけなかったか。」

「そもそもそれでいけると思ったんが不思議ぜよ。」

「そういう仁王君こそ両手のタコ焼きと焼鳥は何なの。」

「食い物で釣ろう作戦じゃ。」

「いやトイレに食べ物持ち込むなよ。」



そして仁王君こそよくそれで出てくると思ったな。小さい子じゃないんだしさ。

また振り出しに戻って皆で考えあぐねいていると、
バァン!とすごい音を立てて男子トイレの扉が開かれた。

だ、誰か入ってきたよまずいよ!

慌てて咄嗟に近くにいた仁王君の背中に隠れた。
何故か仁王君は吃ったような声を出してたが構わずその背に隠れる。
なにやってんの?と丸井君の怪訝そうな声が後ろから聞こえたが無視した。
こっちは変態のレッテルを貼られるかどうかの瀬戸際なんだからしょうがない。



「切原君がここで篭城しているとは本当ですか!」

「赤也!一度決めた事を投げ出すとはたるんどるぞ!」



入ってきたのはどうやら柳生君と真田君のようだ。
ほっとして仁王君の背中から顔を出すと、二人がぎょっとしたように私を見てきた。



「な、!何でお前がこんな所に!ここは男子トイレだぞ!」

「知ってるよ!」

「では何故ここに?」

「たまたまさんが通りかかったのを俺が入れたんだよ。
 赤也がもしかしたら耳を貸してくれるかと思ってね。まあ無理だったけど。」

「……すんません。」

「そういった事情でしたか。すみません巻き込んでしまって。」

「ううん。それはいいんだけど切原君が…。」


真田君が怒鳴りつけていたが、当然出てくる気配がない。
これは思ったより厄介だと、ため息をついた。
すると今まで静観していた越前君が突然口を開いた。



「へえ、逃げるんだ。」

「何だと!」

「俺ならどんな役だって最後までちゃんとやり通すけどね。」

「コラ越前!すみませんうちの越前が。」



越前君は不適に笑って切原君を挑発した。
桃城君は慌てて謝ってたけどこれはあながち効果があるかもしれない。



「なるほど。挑発しておびき出そうってわけか。」

「はは、いくら赤也でもそこまで単純じゃ……。」




バン―!




「おうおうおう!そこまで言われて黙っちゃいられねぇ!やってやろうじゃねえか!!」



切原君が扉を勢いよく開けて出てきた。
しん、と一瞬辺りが静まり返る。



「思ったより単純だったな。」

「ああ。」



切原君が出てきてくれて万事解決、よかったよかったと改めて切原君の格好を見る。


……そうだシンデレラ役なんだっけ。ピンクの花柄ドレスがよくお似合いで……。

そこまで考えて込み上げてきた笑いが吹き出しそうになる。
寸前の所で横にいた仁王君に手で口を塞がれた。
丸井君も気づいたのか前に回り込んで私から切原君が見えないようにした。



我慢しんしゃい。ここで笑ったらまた逆戻りぜよ。」

「そうだ。死んでも笑うな。堪えろぃ。」

「んぶっ。」



息が出来ないと仁王君の腕をタップしたら
それに気づいてすまんすまんと謝って解放してくれた。殺す気か。



「あー、苦しかった。」

が吹き出しそうになるからぜよ。」

「ごめんごめん。大丈夫だってそんな心配しなくても……ぷっ。」

「てめ、いい加減にしろぃ!」



丸井君に頭を叩かれた。ごめん今のは私が悪かった。
あ、切原君がじっとりとした目で見てる。



「なんにせよ上手くまとまってよかったね。」

「無理矢理きれいにまとめようとすんなよ。」



その後周りに誰もいないか確認してもらってから無事男子トイレから脱出した。

テニス部の面々は準備があると慌ただしく去って行き、
青学の二人は始まるまでもう少し模擬店を見て回ると行ってしまった。


さて私もそろそろ戻るか。なんか疲れた。
















ワカメの籠城事件。






11.9.9