テニス部によるシンデレラは予想以上に面白かった。
最初の幸村君によるナレーションで喜劇って言った時点でおかしいとは思ったのだけど。

配役は継母と姉役が柳生君と丸井君で二人共ドレス姿似合い過ぎて笑った。

仁王君に至っては魔法使いとかじゃなくて謎のキノコ売りだった。何それ意味わからん。

桑原君は馬車を引く馬の役だったけど、
被った着ぐるみとキノコの馬車が可愛らしかった。でもちょっと不憫だ。(役柄が)

それでちょっと意外だったのが真田君が王子役だったってこと。
てっきり幸村君あたりがやるのかなぁと思ってたけど。彼は監督兼ナレーションのようだ。

真田君は完全和風なイメージなのにこれまた意外とよく似合っていた。
演技もうまかったし、なかなか迫力があった。

柳君はその王子の従者役。柳君もどちらかと言うと和だけどばっちり着こなしてた。

途中アクシデントがあって(その間繋ぎで柳生君と仁王君がコントして面白かった)
何故か切原君の代わりに越前君が出ててなんぞと思ったけど
越前君も地味にドレスが違和感無くてかわいかった。本人には言えないけど。


そんなこんなでテニス部の演劇は大成功で幕を降ろした。とても面白かった。











それで文化祭も早くも最終日。
今日は自由時間が合間に各々設けられていて、私はちよちゃんと文化祭を見て回る予定になっていた。


…筈だったのだが。





「あ、ごめん行けなくなった。」

「は?何で。」

「彼氏と回ることになったの。」

「彼氏!?」



素っ頓狂な声を上げればちよちゃんはうるさいと顔をしかめた。



「いやいやいや。彼氏とかいつの間にできたのよ。」

「始業式くらいかな。」

「聞いてないんですけど。」

「ああ、ごめんごめん。
 あまりにも付き合ってる感が薄くてさ。何か言いそびれちゃって。」



ちよちゃんによるとその彼氏とは以前から仲が良く、部活の応援とかも行ってたらしい。(野球部なんだってさ)
それで夏休み明けから付き合い始めたと。

友達の延長線のような関係だったのであまり付き合ってるという感じがなかったそうな。
それで私にもつい言いそびれたようだ。

で、そんなんだから文化祭も自分達それぞれの友人と回るという段取りだったらしいが、
昨日突然彼氏のほうから一緒に回ろうと言われたそうで。
結果、彼氏と行くことにしたというわけだ。



「……なるほど。そういうわけか。」

「うん。ほんとごめんね。」

「大丈夫大丈夫。誰か適当に誘って行くよ。」



申し訳なさそうに謝るちよちゃんの背中をぽんぽんと叩いた。
彼氏と楽しんで来なよ、と言えば気恥ずかしそうにはにかんで、うんと呟いた。
その姿が何だかいつもよりきらきらと輝いている気がして純粋にうらやましいなあと感じた。





仕事に戻ったちよちゃんと別れて教室から出る。
廊下の窓枠にもたれ掛かって外を眺めた。

中庭では生徒達が楽しそうに行き交っている。
ぼんやりとそれを眺めていたら、ふらっとした動作で仁王君が隣にやって来た。
ちらりと横目で確認してからまた視線を窓の外へ戻す。



「なんじゃ、ぼーっとしくさって。」

「……ちよちゃんがリア充の仲間入りを果たしたんだよ。」

「はあ?」



仁王君に事の顛末を話せばなるほどなと頷いた。


「しっかし佐久田にも彼氏ができたとはのー。」

「ねー。おめでたいけど今日私はロンリーなんだよ。」

「そりゃ寂しいな。」

「寂しいよ。」


秋特有のすっきりした涼しい風が前髪をさらって
ついでに被っていた赤い頭巾もぱさりと首の後ろに落ちた。
仁王君の着てる私のそれとは対照的な白衣が少しだけなびく。
同じように窓の外を眺めてた仁王君はなあ、と口を開いた。



「なら俺と一緒に回らんか?」

「…え?」

「……嫌か?」

「へ、ああ、ううん。全然私は大丈夫だけど……。」



思わぬ提案にびっくりして変に吃ってしまった。
いやでもあの仁王君が私と一緒に文化祭を回るとか。
それを了承する返事をすれば、仁王君はわずかに口角をゆるめた。



「でもなんでいきなり私と?」

がかわいそーじゃから付き合ってやるだけぜよ。俺も暇やし。」

「……仁王君て友達いないの?」

「そんな憎まれ口言うんはこの口か。」

「いひゃいいひゃい!ふみまへんでした!」



いらっとした顔で頬を抓られて慌てて謝罪すれば、引っ張った後離してくれた。
(ばちんっつったぞまじ痛い!)



「なんか最近暴力的じゃないですか。」

「愛故になり。」

「何それ恐い。」

「ひどいのう。」



腕を抱いて寒がるフリをしたら、仁王君はからから笑った。
でも彼なりに私を気遣ってくれてるのだろう。



「じゃあ決まりってことで。」

「うん。あ、やば。仕事戻らないと。」

「えー、めんどい。」

「めんどいじゃないっての。
 うちの花形なんだからしっかりして下さい。焼肉の為でしょ。」

「おお、そうじゃった。焼肉焼肉。」



ぱっと機嫌が戻り呪文のように肉肉呟きながら仁王君は教室に戻っていった。

よーし、残りわずかがんばろう。















センチメンタルと約束。







11.9.9