今日の星座占いは11位だった。
11位って一番微妙なラインだと思うのは私だけではないはず。
最下位に用意された運気挽回の為のラッキーアイテムも無いしさ。
ちょっとだけマシだなんてごまかされるくらいならいっそ最下位の方が吹っ切れるものである。
で、何故そんな星座占いを恨んでいるかというと、
事の始まりは今朝登校中に車に水溜まりの水を引っ掛けられ、
授業中は居眠りしかけたのを目敏く先生に見つけられ、難しい数式を解けと黒板まで連行されたし、
お昼休みにはミートボールを1つ床に落っことしてしまった。楽しみにしてたのに…。
何だこのプチ不運の連続は。
おまけに放課後図書委員会の仕事を終えた時に宿題のプリントを教室に忘れたことに気づいた。
今日はとことんツイてないらしい。
はあ、とため息をはいて自分のクラスに向かうべく足を進めた。
*****
廊下は既に夕暮れの濃いオレンジ色で満たされていた。
早く取って帰らないと、今日は私が夕飯当番だから急いで支度せねば。
何を作ろうかと頭の中で色々献立を組み合わせていると、いつの間にか教室前に着いていた。
おおう、危うく通り過ぎる所だった。
扉に手をかけて入ろうとしたら、中から誰かの話し声が聞こえた。
男の子と女の子の声。内、男の子の方には聞き覚えがある。
仁王君の声だ。女の子は、ちょっとわからない。
そこから漂う何となく入りづらい空気に圧されて扉から手を外す。
建て付けが悪くてぴっちり閉まらない扉は少しだけ隙間が空いていた。
悪いな、と思いつつちょっとした野次馬根性が顔を出して、そっと見つからないように教室の中を覗いた。
真ん中辺りの机に仁王君はこちらに背を向けてもたれていた。
向かい側には違うクラスの女の子。
何組まではわからないけど、ふわふわした髪に大きな瞳が印象的なかわいらしい子だ。
その子はほのかに頬を桃色に染めて何かを言いたそうにもじもじしている。
その様子とゆるい中にもぴりりとした緊張感が漂う空気にこれはあれだと、告白をするんだと検討がついた。
まさか告白現場をリアルに目撃するとは思わなかった。
それと同時に勝手に覗き見している事が申し訳なくなった。
止めよう、立ち去って彼らがいなくなるのを待ってプリントを取りに来よう
そう思っているのに体はかちりと固まったように動かなかった。
何だか胸のあたりがざわざわする。
変にドキドキしていて暑くもないのにこめかみからつうと一筋汗が流れた。
なかなか話し出さない女の子に痺れを切らしたのかややあと仁王君から口を開いた。
「なんじゃ話って。」
静かな教室にピンと仁王君の声が通った。
女の子は少しおろおろした後、意を決したようにきっと顔を上げて仁王君をまっすぐ見上げた。
「…仁王君のこと前から好きだった。私と付き合って下さい…!」
じっと強く仁王君を見て彼女が思いを告げた。
言った、女の子が勇気を振り絞って…。
瞬間、ざわりと心の奥底で何かがざわついた。
なんだろう、今の。
些細な自分の異変に戸惑うが今はこの告白の行方が気になる。
張り詰めた空気の中、女の子は緊張の面持ちで仁王君の返事を待っていた。
実際には数分だっただろうけど、何十分にも感じられる時間が経った時だ。
「悪いが、お前さんの気持ちには答えられん。」
仁王君からの返事はNOだった。
女の子はその大きな瞳を丸くして、今にも泣き出しそうな声でどうしてと問いかける。
「…好きな奴がおるんじゃ。だから他の誰でもダメなんだ。」
女の子の目からついに涙がぽろりと零れ落ちた。
かわいい子は泣き顔もかわいいな、と別の事を考えつつも仁王君の言葉に衝撃を受けていた。
好きな人がいたんだ。
別に誰かを好きなことくらいおかしなことじゃないのに。
全然普通なことなのに。
なんでこんなに苦しんだろう。
ぎゅっと胸の辺りを握り締める。
シャツにくしゃりとシワが寄ったけど気にならなかった。
胸が、心の内側が脈を打つようにどくどくと叩かれて苦しい。
仁王君の表情は見えなかったけど、好きな人がいると言った時の
言葉の端々に本当にその人のことが好きなんだとわかるくらい優しい気持ちが滲み出ていた。
それを聞いて何で私はこんなに動揺してるんだ。
わからない、わからない。
静かに立ち上がるとそのまま教室を離れて走り出した。
必死に足を動かして校舎から出てから空を見上げると空はどんよりと重たい雲が覆っていた。
あらしの訪れ。
12.8.13