体育が終わって教室に帰ると仁王君はいなかった。
やはり辛くて保健室へ行ったのか。
3限目の数学が終わり、凝り固まった肩をばきぼき鳴らす。
「すごい音じゃのう。」
「うっわ、びっくりした仁王君か。気配消していきなり声かけないでよ。」
背後から突如響いた低音に思わず肩が揺れた。
抗議すれば当の本人はしれっとした顔でプリッと一言鳴いた。
(な、なんだその鳴き声は……)
「あ、もう頭は大丈夫なの?」
「その言い方何か嫌じゃ。
お前さんに貰った薬のおかげで随分楽になったぜよ。」
「そうかー。よかったね、バファリンは何でも効くから便利だよね。」
「そんなことないじゃろ。」
「そんなことあるよ。だってバファリンの半分は優しさでできてるし。」
「ますます関係ない。」
仁王君は無表情で否定すると(なんか傷つく)
ポケットをまさぐると私の机にそっと何かを置いた。
「……大根せきのど飴。」
「バファリンのお礼。受け取っときんしゃい。」
「………微妙。」
「微妙とか言うな。」
「だって、つか何であえてこれ?チョイスが渋いよ。君はおばあちゃんか。」
「細か事気にしたら負けぜよ。」
「細かくない。飴なら小梅ちゃんがよかった。」
「礼に注文つけるな。ほれ、もう1つやるから。」
「ありがとう……ってこれも蓮根せきのど飴じゃん!
だからなんでこのシリーズ!どんだけ渋いのど飴好きなんだよ!」
「文句言うなら返せ。」
「いや一応貰うけど。」
貰える物は貰っとくのが私のモットーなので。
のど飴2つをポケットに仕舞うと仁王君はうん、と頷いてからほいじゃあの、と軽く手を振って去って行った。
少ししてちよちゃんがこちらに近づいてきて私の机に座った。
「、仁王と知り合いだったの?」
「ちょっとちよちゃん教科書が尻の下敷きになってるよ。どいて下さい。」
「ちっ、…で?どうなのよ。」
「舌打ちすんな。いや、さっき頭痛いっていうからバファリンあげただけだよ。」
「へー。」
「ちょ、ポテチのかすこぼさないでくんないちよさんコノヤロウ!」
ポテチのかすを払い、先程頂いた大根せきのど飴を食べてみた。
………うん。やっぱり渋い味。
なんだか無性におばあちゃんに会いたくなった瞬間だった。
詐欺師の恩返し。
11.1.8